2018 Fiscal Year Research-status Report
刺胞動物シナプスの形態と分子構築からシナプスの進化を探る
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18K06339
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
濱田 俊 福岡女子大学, 国際文理学部, 教授 (60282349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱田 香世子 福岡女子大学, 国際文理学部, 学術研究員 (20448814)
美濃部 純子 福岡女子大学, 国際文理学部, 助手 (80190718)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 刺胞動物 / ヒドラ / 散在神経系 / シナプス / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
刺胞動物の散在神経系は、最も原始的な神経系の1つとされる。散在神経系のシナプスは、脊椎動物などのシナプスと比較すると、構造的に原始的な特徴を有しているが、その分子構築の違いはほとんどわかっていない。シナプスの分子進化の過程を探る目的で、刺胞動物モデル生物であるヒドラの神経細胞にどのような脊椎動物シナプスたんぱく質相同分子が発現しているのか検討した。今年度は、脊椎動物のsynaptobrevin(2種類), SV2, PSD-95, gephyrin,SNAP-25, SNAP-29のcDNAクローニングを行い、塩基配列を確認した。これらのうち、5種類についてwhole-mount in situハイブリダイゼーション法により神経細胞に発現しているかどうか検討した。その結果、SV2とSNAP-25は腺細胞と思われる細胞に発現していると考えられた。また、Synaptobrevin(2種類)とPSD-95については、組織の固定法、前処理、ハイブリダイゼーション条件などを検討しつつ検出を試みたものの、明瞭な発現様式を観察できなかった。本研究では、synaptobrevinをシナプス小胞開口分泌マーカー(synaptopHlourin)として利用することも計画しているため、さらに免疫染色による検出も試みた。アミノ酸配列の相同性から反応する可能性があった市販の抗ヒトsynaptobrevin抗体を入手するとともに、ヒドラsynaptobrevinのN末端15残基を抗原ペプチドとして抗体作成を行った。作成した抗体はELISAでは高い力価を示した。FLAGタグ標識ヒドラsynaptobrevinをCOS7細胞に発現させ、市販抗体および作成した抗体により免疫染色を行ったが、いずれの抗体でも染色シグナルが得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、今年度ヒドラのシナプスに局在する可能性がある分子を2種類同定する予定であった。脊椎動物シナプス分子に相同性を示す5種類の遺伝子の発現を検討したが、いずれもヒドラの神経細胞に発現していることを示す結果が得られず、ヒドラのシナプス分子候補を得ることができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒドラ・シナプス分子の同定は、本研究のなかで重要な位置を占めているので、さらに多くの脊椎動物シナプスたんぱく質相同分子の探索を進める。また、今年度の結果は、ヒドラに存在する脊椎動物シナプスたんぱく質相同分子は、必ずしも神経細胞に局在しない可能性を示唆している。今後は、抗体を作成し免疫染色により局在様式を明らかにする。
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Causes of Carryover |
予想外の研究結果(脊椎動物シナプスたんぱく質ヒドラ相同分子が神経細胞に検出されない)に伴って抗体作成やトランスジェニック動物の作成・観察に必要な物品費がまだ未執行であること、動物飼育の人件費が今年度他の予算から捻出できたこと、研究分担者が学会参加を見送ったことによる。
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