2018 Fiscal Year Research-status Report
ハイスループット解析系を用いた新規温度情報伝達分子の単離
Project/Area Number |
18K06344
|
Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
太田 茜 (久原茜) 甲南大学, 自然科学研究科, 研究員 (50410717)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | C. elegans / 温度受容 / ハイスループット |
Outline of Annual Research Achievements |
温度は生物の生存に必須の環境情報である。動物において温度情報は神経系や表皮など様々な細胞で受容されることが知られている。その中でも、感覚神経細胞における温度受容には、TRPチャネルが関わることが知られている一方で、TRPチャネル以外の温度受容体については未解明の点が多い。本研究者は、これまでに線虫C. elegansをもちいた低温耐性の解析から、個体の低温耐性が、頭部の温度受容ニューロンで受容された温度情報によって制御されることが見つかってきた(Ohta et al., Nature commun, 2014)。この温度受容ニューロンにおいて、温度情報は視覚や嗅覚などと同様に三量体Gタンパク質(Gα)で伝達されることが見つかってきている(Ohta et al., Nature commun, 2014; Ujisawa et al., PLOS ONE, 2016)。本研究では、低温耐性における温度受容ニューロンに着目し、未知の温度情報伝達に関わる分子の同定を目指し解析を進めている。具体的には、Gαの上流の分子や、TRPやGαに依存しない温度情報伝達分子に着目し、未同定の新規の温度受容体の単離を目指し逆遺伝学的スクリーニングと順遺伝学的スクリーニングを行った。温度受容体候補遺伝子のノックアウト変異体を単離し、その変異体の低温耐性異常と温度受容ニューロンにおける温度応答性の低下が見つかった。また、新規の低温耐性変異体endu-2とkqt-2の解析から、低温耐性に関わる新規の温度受容ニューロンとして、従来は化学受容ニューロンとして知られていたADL感覚ニューロンが温度に応答することをカルシウムイメージングにより明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
温度の情報処理に関わる分子を非常にシンプルな実験系でハイスループットに同定することができれば、その知見は飛躍的に増加すると考えられる。本研究では、近年同定した低温耐性現象を解析モデルとして、温度情報伝達に関わる新規の分子の同定を行うことで、基本原理の解明を目指している。本年度は、飼育温度依存的に発現変動する遺伝子の解析から、低温耐性と低温馴化に関わる新規の温度受容ニューロンが見つかり、そのニューロンで機能する新規の温度情報伝達分子を同定した。また、それらの変異体における温度受容ニューロンの温度応答性をカルシウムイメージングで測定し、温度受容における関与を解析したことから、当初の計画通りと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は前年度に引き続き、低温耐性における温度受容ニューロンに着目し、未知の温度情報伝達に関わる分子の同定を進める。未同定の温度受容体などの温度伝達分子の単離のための逆遺伝学的スクリーニングと順遺伝学的スクリーニングを引き続き進める。前年度に候補として同定された温度受容体の遺伝子に関しては、引き続き表現型と神経活動のCa2+イメージングから温度情報伝達への関与を解析する。
|
Causes of Carryover |
当初計上していた経費などに関して、共同実験者の長期病休などにより使用変更があったため、その分の未使用額が生じた。一方で、本年度は効率的に研究を遂行するために研究の遂行に務めたため、興味深い結果が得られている。 単離した遺伝子の変異体に関して、カルシウムイメージングなどの光遺伝学解析を行う予定であるため、そのための解析費用を予定している。その他、解析の進捗状況に応じて、線虫実験の消耗品が増減するため、適宜消耗品の発注を行い使用を計画している。
|
Research Products
(25 results)