2018 Fiscal Year Research-status Report
Mechanism of meiosis in triploid planarian- Different chromosome elimination between sex.
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18K06352
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松本 緑 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (00211574)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 3倍体 / 減数分裂 / 染色体分配 / シナプトネマ複合体 / SYCP1 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノムの倍数化は、種分化および進化を促進する大きな要因の1つであると考えられている。しかし倍数化にはデメリットもあり、その1つが減数分裂の乱れである。特に3倍体などのゲノムを奇数セット持つ奇数倍数体は減数分裂第一中期に3価染色体が形成されるため、染色体分離が均等に行えず、異数体配偶子が形成され、不稔になると考えられる。 プラナリアの一種であるリュウキュウナミウズムシは自然界に2倍体と3倍体が混在する。さらにそれぞれに分裂と再生によって増殖する無性個体と、雌雄同体の生殖器官を持つ有性個体が存在するが、3倍体の雌雄同体の有性個体は生殖器官を持ちながらも単為生殖を行うと考えられていた。しかし、研究代表者はリュウキュウナミウズムシ(n = 7)の3倍体の有性個体がゲノムの混合を伴う有性生殖を行うことを証明した。その過程で「3倍体のプラナリアにおいて雄性生殖細胞系列では減数第一分裂前期で既に染色体が1セット削減され2倍体となっているのに対し、雌性生殖細胞系列では減数第一分裂中期まで3倍体が維持されている」ことを発見した。3倍体の雌性生殖細胞では減数分裂時に卵母細胞は一対の相同染色体のみが対合し7組の2価染色体が形成し、残り7本の染色体は1価染色体として存在することを観察した。 初年度は、雌性生殖細胞の減数分裂第一分裂における紡錘体の動態と染色体の挙動を観察し、対合しない1価染色体が微小管と結合しているか否かを明らかにすることを目指した。さらに、減数第1分裂前期における染色体の対合に必須とされるシナプトネマ複合体タンパク質(SYCP)に着目し、SYCP1抗体による免疫染色とSYCP1遺伝子のRNAiによるノックダウンによりその局在と減数分裂への影響を調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、雌性生殖細胞の減数分裂第一分裂における紡錘体の動態と染色体の挙動の観察を、独自に開発した方法を用いて行った。成熟有性化個体の卵巣領域を切断し、雌性減数分裂の染色体とその挙動を制御する分裂装置の観察をチュブリン抗体、PIで2重染色を行い、減数第一分裂中期の細胞に注目し、染色体と微小管の結合およびその位置を観察したところ、減数第1分裂の中期では分裂装置に組み込まれない染色体が観察され、装置の中と外のDNA量比が1:2であることが示唆された。また、後期の細胞では3つの紡錘体極と3つの染色体塊が観察され、1つの染色体塊は1nと推測でき、3つの塊のうち1つが削減されることが示唆された。 プラナリアの減数分裂におけるSYCP1の機能を調べるため候補遺伝子の探索を行った。アノテーションと相同性からcomp16445に候補を絞った。comp16445の無性個体と有性個体の発現量の差を比較するため、RT-PCRにより解析を行った結果、無性個体と比較して有性個体の方が2.3倍発現が高く、comp16445が減数分裂特異的に働くことが示唆された。 Whole mount in situ hybridization によりSYCP1 (comp16445)の発現部位を確認したところ、卵巣と精巣部位にシグナルが見られたことから、SYCP1が減数分裂に関与している可能性が示唆された。 卵母細胞におけるSYCP1の発現部位を確認するために、SYCP1抗体を用いて免疫組織化学染色を行った。糸状のDNAの中心を通るようにSYCP1のシグナルが確認できたことから、プラナリアの減数分裂においても相同染色体が形成されていることが考えられる。 有性個体においてSYCP1をノックダウンし、β-チューブリン抗体を用いて分裂装置を染色した。減数第1分裂後期と考えられる卵母細胞において、染色体分離の乱れが観察された。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度、研究代表者は3倍体の雌性生殖細胞で異常な染色体分配の状態を観察したが、2倍体の株化されたリュウキュウナミウズムシが存在しないために、2倍体の減数分裂の観察を行えていない。本年度は、2倍体のリュウキュウナミウズムシの株化を行い、正常な減数分裂像を観察する。そのために3倍体のOH株を有性化し、交配させることにより得られた子虫の核型を調べ、2倍体の個体を選択する。これを切断と再生により増やして株化する。3倍体と同様な方法で、雌性減数分裂の染色体とその挙動を制御する分裂装置の観察をチュブリン抗体、PIで2重染色を行い、減数第一分裂中期の細胞に注目し、染色体と微小管の結合およびその位置を観察し、3倍体と2倍体の違いを検討する。また、SYCP1抗体を用いて免疫組織化学染色やRNAiによる機能阻害により2倍体の減数分裂の状況も確認する。 さらに、昨年度示されたSYCP1の染色体分離に対する影響を詳細に調べるために、SYCP1ノックダウン個体の切片を作製し、卵巣における生殖細胞形成の様子を観察する。SYCP1抗体による免疫染色とSYCP1遺伝子のRNAiによるノックダウンによりその局在と減数分裂への影響を調べる。 SYCP1以外の染色体分配関連の遺伝子にも着目する。候補としてショウジョウバエの減数分裂期の紡錘体伸長に必要なカルシプレッシンを用いて、生殖細胞における発現と減数分裂における作用を検討する。
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Causes of Carryover |
当初、国際学会参加費用をこの科研費より使用しようと考えていたが、大学内の海外渡航奨励金が得られたので、旅費が少なくて済んだこと、また、RNAseqの委託の支払いが次年度に回ったことにより次年度使用額が生じた。
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