2018 Fiscal Year Annual Research Report
Dobzhansky–Muller incompatibilities in regulatory evolution and reproductive isolation
Project/Area Number |
18K06354
|
Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
木曽 彩子 (岡彩子) 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 特任研究員 (80425834)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 生殖隔離 / 精子形成 / コンソミック系統 / モロシヌス亜種 / X染色体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドメスティカス亜種由来のマウスC57BL/6J系統の遺伝的背景において、X染色体をモロシヌス亜種由来のMSM系統のものに置き換えた亜種間染色体置換系統(コンソミック系統)は、精子形成の異常が原因で生殖能力が欠失する。これまでの研究では、X染色体コンソミック系統の精巣で、MSM系統由来のX染色体上の遺伝子の発現が異常になることが分かっていた。そこで、この発現異常は、X染色体連鎖遺伝子の発現調節におけるMSM系統アリルのシス調節領域とC57BL/6J系統アリルの転写調節因子の間の何らかの不適合が原因で生じている、との仮説をたてた。本課題においては、精子形成に重要な転写因子であり、X染色体コンソミック系統の精巣で発現低下しているTaf7l遺伝子に注目し、転写調節におけるシス調節領域と転写調節因子の間の不適合を、ES細胞を用いたレポーターアッセイを用いて解析した。解析の結果、Taf7l遺伝子周辺に、C57BL/6J系統アリルでのみ高い活性を持つエンハンサーを発見した。興味深いことに、このエンハンサーの活性はドメスティカス亜種由来の野生系統では保存され、モロシヌス亜種・ムスクルス亜種・キャスタネウス亜種に由来する野生系統では活性がみられなかった。このことは、異なる亜種のゲノムが交配によって混ざるときに、亜種ごとに独自に進化したエンハンサーが、遺伝子の発現調節に影響を与える可能性を示している。また、この系統のX染色体連鎖遺伝子の発現異常は、精巣の生殖細胞で特異的に起きており、体細胞では認められなかった。このことから、生殖細胞においては、遺伝子の転写調節に関わるシス・トランス調節因子が速く進化しており、不適合を発生しやすい傾向があると考えられた。このことは、生殖隔離に伴う表現型が、雑種動物の精巣や卵巣などの生殖器官に集中して発生していることと関係していると考えられた。
|