2019 Fiscal Year Research-status Report
有性生殖を介した抗酸菌進化モデルの実験と集団ゲノミクスによる検証
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18K06357
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
矢野 大和 東北大学, 生命科学研究科, 講師 (20646773)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 系統進化 / 非結核性抗酸菌 / プラスミド |
Outline of Annual Research Achievements |
Mycobacterium avium subsp.hominissuis (MAH) のニッチ適応に寄与するアレルまたは遺伝子座が組換えによって集団内を移動しているかどうかを浴室分離株の新規ゲノム解読と生物情報学的解析によって検証することを目指している。そのために、まずデータベースに登録済みのMAH世界分離株125株分の染色体配列データを対象として遺伝的集団構造解析や連鎖検出解析などを行い、組換えを頻繁に行う系統と組換えをあまり行わない系統の2系統が同じ地域に生息し、それらが “交配”していることをゲノム情報学的に明らかにした。さらに組換えのコールドスポットに注目することで、環境分離株の迅速な系統予測に利用可能なマーカー遺伝子を発見した(Yano et al., BMC Genomics 2019)。共同研究者や健常者ボランティアの協力を得て、日本全国の健常者の家庭の浴室に分離培養可能なMAHが定着していることを明らかにした(Arikawa et al., Infec. Genet. Evol. 2019)。MAH臨床群と浴室群のゲノム比較を行う準備のために、これまでに得られていた臨床群7株分のロングリードやショートリードを用いたゲノムアッセンブリーを見直した結果、MAH日本分離株が染色体外DNAを高頻度に保有していることが示唆された。その確認のため、特定の株についてはパルスフィールド電気泳動やサザンハイブリダイゼーションを行い、染色体外DNAが存在する証拠を得た。今後、ロングリードシーケンサーを用いて、浴室群40株分のゲノム解析を行い、遺伝子が染色体上にあるのかプラスミドなどの可動遺伝因子上にあるのかを明確にする。その後、統計解析によって臨床群または浴室群に偏って存在しているアレルや遺伝子座を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
M.aviumの遺伝子導入は非効率で、蛍光マーカー遺伝子を導入できない問題を解決できていない。その対応策として、バクテリオファージを用いたマーカー遺伝子導入系を確立するため、バクテリオファージを入手しているが、さらにその遺伝子改変を行う必要がある。一方で、臨床群と浴室群のゲノム比較を行うための菌株収集自体は概ね順調に進行し65株を分離できた。ゲノム抽出プロトコルを改良し、ロングリードでのゲノム解読をする準備を整えた。
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Strategy for Future Research Activity |
バクテリオファージを用いたマーカー遺伝子導入系を確立するため、遺伝子人工合成を利用する。浴室分離株65株のゲノムシーケンシングを行う。うち、約40株分についてはロングリードシーケンシングを行い、遺伝子が染色体上にあるのか、プラスミドなどの独立して移動する可動遺伝因子上にあるのかを明確にする。その後、情報学的な解析によって、臨床群に偏って存在しているシーケンスモチーフを明らかにする。
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Causes of Carryover |
実験的に作り出す予定だったモザイクゲノムを持つ組換え体のリシーケンシングができなかったためである。浴室分離株のゲノムアッセンブリーの質を上げるためのイルミナまたはPacbioマシンによるシーケンシングにあてる。
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Research Products
(8 results)