2018 Fiscal Year Research-status Report
複雑な花弁形態が作られるメカニズムを探る:至近要因と究極要因の統合的解析
Project/Area Number |
18K06366
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
武田 征士 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (90508053)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | サギソウ / 唇弁 / 鋸歯 / トランスクリプトーム / スズメガ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、サギソウの複雑な唇弁形態を、(1)遺伝子・細胞レベルでの形成メカニズムの観点、(2)ポリネーターとの共進化の観点、から明らかにすることを目的にしている。(1)については、葉とつぼみの比較トランスクリプトームを次世代シーケンサーを用いて行い、HrAP2, HrDEF, HrGLO, HrAG, HrAGL6などのクローニングと塩基配列決定を行なった。これらの遺伝子について、各花器官のRT-PCRによる発現解析を進め、唇弁特異的なMADS box遺伝子コンプレックスがあることを示唆した。また、異なる発達段階の唇弁の鋸歯部分の細胞形態を、カルコフロー染色と共焦点レーザー顕微鏡によって可視化し、ImageJによる画像解析を行うことで、鋸歯形成の初期はローカルな細胞分裂制御によって鋸歯が作られ、後半は細胞伸長によって鋸歯が伸びていくことが示唆された。一方、遺伝子組み換えのための培養系確立については、葉や花器官等の組織培養をMS培地等で試したが、組織が褐片化してうまくいかなかった。唯一、雌ずいの組織片の一部から細胞塊の分裂が見られたが、長続きせずに褐片化、枯死してしまった。(2)では、屋外栽培のサギソウのタイムラプス撮影および動画撮影を行い、スズメガの一種(セスジスズメと思われる)が、夕方暗くなった時に訪花し、ホバリングしながら吸蜜している様子を初めて撮影できた。この事から、サギソウ唇弁の複雑な花弁は、少なくとも訪花昆虫の認識に貢献していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トランスクリプトームと得られた配列情報を用いたクローニング、発現解析は順調に進めることができた。また、鋸歯細胞のイメージングと解析は他の共同研究者の協力を得られたこともあり、ImageJを使って予想以上に進めることができた。一方で、形質転換のためのサギソウ培養系確立については、いくつか試したがうまくいかず、今後のさらなる条件検討が必要である。ポリネーター調査については、栽培個体をもちいて訪花している様子を動画に納めることができたので、順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)については、得られたトランスクリプトーム結果から唇弁形成に関わると考えられる遺伝子(TCPファミリー等)をクローニングし、発現解析を進める。組織培養の可能性が示された雌ずいを用いて、培地の条件検討を行なって培養系の確立を目指す。(2)については、栽培しているものについて引き続き動画撮影によるポリネーター調査を進めると共に、野外自生種の訪花昆虫の調査を研究分担者を中心に行う。
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Research Products
(2 results)