2019 Fiscal Year Research-status Report
複雑な花弁形態が作られるメカニズムを探る:至近要因と究極要因の統合的解析
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18K06366
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
武田 征士 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (90508053)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末次 健司 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (70748839)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | サギソウ / 唇弁 / 訪花昆虫 / スズメガ |
Outline of Annual Research Achievements |
サギソウ唇弁の複雑な形態が送粉者を誘引するという仮定のもと、開花期に撮影した動画と写真の詳細な解析を行った。合計およそ86時間のビデオ撮影と、68,538枚の15秒インターバル撮影写真を解析し、アザミウマ、アリ、ハチ、スズメガが訪花することが分かった。また、唇弁の生態的意義を有しているのかを明らかにすることを最終目的に定め,自生地3地点での野外調査を行った.その結果,唇弁の操作実験で果実重量と種子の有胚率が唇弁の鋸歯を切除することで低下する傾向がみられた.この理由として柱頭に付着した花粉の量または質が異なることが考えられる.花粉の量や質は植物と送粉者との相互作用により大きく変動することから,唇弁の操作が送粉者の訪花に何らかの影響を及ぼし,もって果実重量や有胚率が低下した可能性が高いといえる.今後,訪花昆虫ごとの送粉貢献度を分離する調査や,送粉者の訪花行動のより詳細な観察を通して,サギソウの唇弁の適応的意義をより詳細に明らかにすることが望まれる.さらに、絶滅危惧種の保全という観点から、球根の冷蔵冷凍保存期間の検証を行い、冷凍保存はかなり難しいが、冷蔵では少なくとも3ヶ月は保存可能であることが分かった。一方、春から夏にかけて高温が続いたため、培養や発生の材料用に栽培していたサギソウのほとんどが枯れてしまう事態が起こった。球根の植替えと室内栽培への移行により、全滅は免れたものの、今後の栽培条件を検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
唇弁形態の生態的意義という観点で、様々な訪花昆虫の動向が動画で確認できたこと、屋外での唇弁形態と受粉・種子有配率との関連を見出すことができ、順調に進んでいると言える。一方、春~夏の高温によってハウス栽培のサギソウが枯れる等の問題が生じており、次年度は屋内人工気象器や圃場など、複数個所での栽培をするなどの対策を取る。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 唇弁の生態的意義を探る屋外調査を引き続き行うと共に、屋内栽培系をベースにした培養系、カルス化を進める。(2) DNAマーカーによる遺伝的多様性の結果をまとめ、論文として公表する。(3) 唇弁形成に関わることが予想される遺伝子をトランスクリプトームデータから選抜し、遺伝子クローニング、発現・機能解析を進める。
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Causes of Carryover |
予定していた野外調査の一部が、研究協力者による代行により不要になったが、送粉者の訪花行動のより詳細な観察を通して,サギソウの唇弁の適応的意義をより詳細に明らかにすることが必要であることがわかった。このため詳細な行動観察を栽培温室において行う予定であり、その設置に必要な消耗品費に使用する予定である。
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