2018 Fiscal Year Research-status Report
フェロモン認識・受容機構の進化的変遷から探る魚類の繁殖行動の多様性と進化
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18K06368
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
橋口 康之 大阪医科大学, 医学部, 講師 (70436517)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
善方 文太郎 大阪医科大学, 医学部, 助教 (90758541)
井上 順治 大阪医科大学, 医学部, 助教 (20814859)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 魚類 / 嗅覚 / フェロモン / 分子進化 / 遺伝子発現 / 行動解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、魚類における性フェロモンの進化機構の解明を通じて、魚類の多様な繁殖行動の進化と嗅覚・フェロモン認識との関連を明らかにすることを目的とする。Prostaglandin F2α(PGF2α)は魚類の性フェロモンであり、その受容体OR114はPGF2αをフェロモンとして用いる種に広く存在する。一方、多くの魚種ではOR114は失われており、OR114の有無とフェロモン認識の進化・退化には関連があると予測される。本研究では、PGF2αとOR114の系に着目して、複数の魚種を対象に(1) OR114遺伝子のスクリーニングおよび分子進化・発現解析、(2) PGF2αに対する嗅覚応答の測定、(3) PGF2αに対する誘引行動の解析および(4) ゼブラフィッシュにおけるPGF2aの応答・認識に関わる遺伝子群の探索を行うことで、PGF2αのフェロモン機能が魚類の系統でどのように進化したのか、また魚類の繁殖行動の違いと、PGF2α認識との間にどのような関係があるのかを明らかにする。 (1) について、現在ゲノム配列が報告されている100種類以上の魚種に対してOR114のスクリーニングを行い、その有無を明らかにした。またOR114の嗅上皮での発現を調べるin situ hybridization実験系の確立をゼブラフィッシュおよびアブラボテで進めている。(2)について、カルシウムイメージングを用いた解析系の確立を進めている。(3) については、ゼブラフィッシュを用いて予備的な実験を行なっている。(4) はまだ未実施であるが、解析のパイプラインは整備済みであり、次年度の実施を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
基本的に当初の目的に沿って研究を遂行しているが、(1)の遺伝子スクリーニングについては、材料として使用を予定しているドジョウのゲノム解読が未実施である。この解析は、より低コストの方法を用いて、次年度に行う予定である。 (2) に関しては、当初は電気生理学的な解析を予定していたが、より簡便かつ高感度なカルシウムイメージングを用いた方法を検討している。次年度は、まずゼブラフィッシュを用いて実験系の確立を目指す。 (3)の行動解析については、引き続き実験系の確立を進め、複数魚種への適用を目指す。ただし、単純にPGF2αを投与した場合に、ゼブラフィッシュでは明確な行動反応が見られなかったことから、実験条件のさらなる検討を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の基本的な解析技術の確立を踏まえ、次年度は実験系(特にin situ hybridization系と、カルシウムイメージング系、行動解析の系)を完成し、複数の魚種でOR114遺伝子の嗅上皮での発現を調べるとともに、PGF2αに対する反応を測定する。また、行動実験に使用する魚種(アブラボテ、ドジョウなど)については、必要に応じてゲノム情報を決定する。また、飼育下で性成熟した個体を準備し、行動解析に使用する。(4)のゼブラフィッシュにおけるPGF2αへの応答・認識に関わる遺伝子群の探索については、PGF2αに対する成熟オス・未成熟オス・メスそれぞれの行動学的または生理学的な応答を確認した上で、嗅上皮および脳からRNAを抽出し、RNA-Seqによる網羅的発現解析を行う。
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Causes of Carryover |
実験系の確立に予想外に時間がかかっており、初年度に行う予定の解析を年度内に行うことが難しくなったため。遺伝子発現解析およびゲノム解析は、次年度に繰り越した予算で行う予定である。また、行動解析およびPGF2αに対する反応の生理学的解析も、次年度以降に予算を用いて進める予定である。
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Research Products
(2 results)