2019 Fiscal Year Research-status Report
Unravelling the genetics of leaf formation in unifoliates
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18K06375
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
西井 かなえ 神奈川大学, 付置研究所, 研究員 (50743770)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 茎頂分裂組織 / 葉発生 / イワタバコ科 / ゲノム / ゲノムワイド関連解析 / 次世代シーケンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、イワタバコ科ストレプトカルプス属植物の遺伝学的解析を行い、自然界に見られる葉発生機構多様性を解明することを目的とする。非モデル植物であるストレプトカルプスの遺伝資源構築のため、Streptocarpus rexiiをモデル種とし、全ゲノム配列の構築を目指している。昨年度得た12Gbのゲノムロングリードシーケンスと合わせ、50Gbのゲノムロングリードシーケンスデータを得たことにより、本年度全ゲノムアッセンブリが可能なデータ量に達した。これを用いてゲノムアッセンブリを行った結果、各スカフォールド長が平均約9,600,000塩基対であり、全スカフォールド数が1,243となるゲノムアッセンブリが得られた。ロングリードゲノムアッセンブリに、以前より得られていた精度の高いHiseqショートリードシーケンスデータを統合し、アッセンブリの配列エラー率を減少させた。 この改良ゲノムアッセンブリをレファレンスとして、葉発生因子同定のためゲノムワイド関連解析を行った。これまでに、ロゼット種S. rexiiと一葉種S. grandisを交配させ、準同質遺伝子系統植物を約200個体育成しサンプリングしている。本年度は、この中で約40個体のサンプルを用い、予備的なゲノムワイド関連解析を行った。それぞれの個体からDNAを抽出し、葉発生形質ごとにそれぞれまとめてHiseqシステムによるショートリードシーケンスデータを得た。得られたシーケンスをS. rexiiのレファレンスゲノムにマッピングし、形質間で異なる一塩基多型を検出した結果、約250万個の一塩基多型を検出できた。 遺伝子機能解析のため、重イオンビーム照射種子を用いた変異体作成を試みている。本年度、M1植物を約300個体栽培し、そのM2種子を得ることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、全ゲノムアッセンブリが可能である量のロングリードシーケンスデータが得られ、ゲノムアッセンブリを遂行できた。バイオインフォマティックス解析の技術習得に予定より時間がかかったため、ゲノムアッセンブリの進行がやや遅れたが、最終的に極めて良好なゲノムアッセンブリ結果を得ることができた。 新ゲノムアッセンブリを用いて、ストレプトカルプス属で初めてのゲノムワイド関連解析に成功した。ゲノムワイド関連解析に用いた近同質遺伝子系統植物群の形質観察では、はっきりとロゼット型を示す個体、一葉型を示す個体以外に、かなり遅れて葉が発生するなどの中間的な性質を示す個体が多くみられた。ロゼット型、一葉型のみでなく、いくつかの異なる中間型に分け、異なる中間形質群のシーケンスデータも得る必要があることが分かった。本年度得られたデータを用いて、予備的に一葉型:ロゼット型のゲノムワイド関連解析を行った結果、十分な量の一塩基多型が検出できたが、擬陽性の一塩基多型が検出される可能性もあり、今後の検証が必須である。今後サンプルデータを増やすことにより、結果の信頼性が増すと考えられる。 変異体作製では、理化学研究所で作製した重イオンビーム変異体の育成を、イギリスのエジンバラ植物園で行い、適正照射量の決定を行うことができ、順調にM2種子獲得に及んでいる。 全体として、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、得られているゲノムアッセンブリを基に、さらなるスカフォールドディング、ゲノムシーケンスデータを用いたスカフォールド間のギャップ充填を行い、ゲノムアッセンブリの改良を重ねる。 ゲノムワイド関連解析の追加データを得るため、近同質遺伝子系統植物の追加サンプルのHiseqシステムによるショートリードシーケンスを行う。このデータと改良ゲノムアッセンブリを用いて、ゲノムワイド関連解析を行う。さらに、改良ゲノムアッセンブリを用いて、既存のバッククロス集団の遺伝型解析を行い、改良遺伝子地図を作成することを計画している。この遺伝子地図を用いて、葉発生形質のQTL解析を行うことで、既存のQTLと比べて精度の高いQTLが検出できることを期待している。ゲノムワイド関連解析とQTL解析の結果を比較し、形質に関わる一塩基多型を予測する。変異体作成に関しては、予定通り続行し、スクリーニング可能な量のM2種子を獲得する予定であるが、COVID-19の影響により研究の進行に遅延が生じることも懸念される。
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Causes of Carryover |
本年度、ゲノムワイド関連解析のため3レーンのHiseqシーケンスを行う予定であったが、実験条件の検討に予定より時間を要し、1レーンのみとなった。次年度繰越分は、追加で解析データを取得する費用に充てる予定である。
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Research Products
(7 results)