2019 Fiscal Year Research-status Report
Study on population formation process in boundary area of floraistic regions
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18K06377
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
福田 知子 三重大学, 教養教育院, 特任講師(教育担当) (10508633)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 植物区系 / 遺伝子構造 / 染色体数 / 生育環境 / 種分化 / 形態解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ユキノシタ科のMicranthes(チシマイワブキ)属Rotundifolia節を対象として、異なる植物区系が境を接する千島列島における集団形成・種分化を明らかにすることを目的としている。この節には、東シベリア~北米の周極地方や北海道の高山にみられるM. nelsoniana、日本~中千島に分布するM. fusca, 千島北部~カムチャツカの山地に生育するM. ohwii他が含まれる。 まず、研究対象が単系統であることを確かめるため、核ITS領域の最尤法(ML)系統樹を構築し、上記3種に沿海州の種を含む4種がM. japonica を外群として単系統を形成することを確認した。 千島列島を中心に、周辺の東アジア、北米のサンプルも加えた計329個体について、葉緑体DNAの4領域を連結した2,366bpの配列に基づいて解析した結果、39種のハプロタイプが得られた。SAMOVAにより、集団間の関係を調べた所、K=2で、全体の集団は、1)択捉島南部Stokap以南~本州のM. fuscaと、2)択捉島中部以北のM. fusca+M.nelsoniana+M. ohwiiの2つに分かれた。さらに、K=6の時、利尻のM.nelsoniana, 択捉中北部のM. fusca,千島北部・カムチャツカのM. ohwiiを含む、千島列島沿いの高山地帯を含むクレードが見られ、これらの植物は種の形態的違いに関わらず、a) 崖地(水際でなく)に生える、b) 温量指数が0~30と非常に低い、という特徴で共通していた。染色体調査によると、このグループ内の数か所と千島北部のM.nelsonianaで2n=50が分類群を越えて観察できることから、倍数体の存在が遺伝的グループの形成に関与していると推定される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目終了までに、千島列島の植物相の成立過程を考える上で必要なサンプルを揃え、今年度(2年目)はこれらについて葉緑体ハプロタイプによる解析を行った。また、カムチャツカ・国内などで新規の場所で追加のサンプル採集を行った。 葉緑体ハプロタイプによる集団解析の結果は、第19回植物分類学会で口頭発表(学会中止のため、要旨のみ)に登録し、論文を投稿した。現在、査読返却を受けて、再投稿準備中である。 核シングルコピー遺伝子を用いた解析も進めており、現在、2倍体と思われる個体を中心にGSII領域約600bpの解析を行っている。染色体数調査の結果、本研究対象には倍数体も含まれると推定されるため、まず、2倍体の個体間の関係の解明に着手している。 今年度は国後島においてチシマクロクモソウの訪花昆虫の撮影を行った所、本州と同様キノコバエ類の訪花が観察されたが、訪問回数の割合が多い種は、本州のキノコバエとは異なっていた。今回と過去の実験により採集した昆虫は同定依頼し、第67回日本生態学会のポスター発表に登録した(学会中止のため、要旨のみ)。チシマクロクモソウの自家交配実験も現地の共同研究者の協力を得て行ったが、結実するはずのコントロールで結実が見られなかったため、結果の解釈が困難となった。 染色体数調査では、新たに大雪山のチシマイワブキについて2n=80を報告した。また、カムチャツカの集団について現地の研究者と共同で調査したところ、カムチャツカ南部で2n=ca. 70~80, 中部で2n=56~64 の染色体数が得られた(未発表)ことから、 遺伝的組成や、周辺地域との関係に関心がもたれる。
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Strategy for Future Research Activity |
葉緑体ハプロタイプによる系統地理解析の結果、千島列島には平地のグループと並行して、高山の生育環境に適応したグループが千島列島全域(北海道~カムチャツカ)にわたって分布することが分かった。これらのグループは完全に独立ではなく、千島列島中部・北部で互いに接触しているようである。 これらのグループ間の交雑や遺伝子交流を含む遺伝的構造を明らかにするためには、両親から遺伝情報を受け継ぐ核DNAの解析が不可欠であると考えられる。現在、核シングルコピー領域とされているGSII領域の塩基配列の決定を進めているが、倍数体とみられる個体については、複数のプライマーを設計するなどの工夫が必要であるため、まず2倍体の関係を明らかにすることを当面の課題としている。今後は異なるシングルコピー領域の配列も合わせて決定することで、核遺伝子による遺伝的構造の解明を目指す。 千島・カムチャツカにおける交配実験については、今年度の訪問可否が不明なため、現地の共同研究者に依頼できる範囲で行う予定である。また、訪花昆虫の結果については、今年度の現地調査が不明のため、これまで得られた結果の範囲でまとめることを考えている。
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Causes of Carryover |
年度末の使用計画がややずれてしまったため。 今年度は、主に遺伝子実験用の試薬や塩基配列解析の委託サービスへの出費が中心となる予定である。
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Research Products
(6 results)