2022 Fiscal Year Annual Research Report
Speciation in the open ocean: how aquatic amniotes have diverged underwater
Project/Area Number |
18K06378
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Research Institution | Museum of Natural and Environmental History, Shizuoka |
Principal Investigator |
岸田 拓士 ふじのくに地球環境史ミュージアム, 学芸課, 准教授 (40527892)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 種分化 / 海棲羊膜類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、明瞭な地理的分断のない、開けた大洋における種分化メカニズムの解明を目指している。海棲の羊膜類は、その起源が明瞭であるために種分化の研究に適しており、また興味深い種分化パターンを示す。始新世に海へと進出した鯨類はおよそ100種が記載されている一方で、ほぼ同じ頃に起源を持つ海牛類はわずか4種しか現存しない。ウミヘビの仲間は、卵生で陸に産卵するエラブウミヘビ類と、胎生で生涯を海中で過ごすウミヘビ類の2つの単系統群に分類される。両者ともに分布域はほぼ重複しており、どちらもおよそ500~1000万年ほど前に陸から海へと移行したと考えられているが、エラブウミヘビ類はわずか8種しか記載されていない一方で、ウミヘビ類は60種以上が記載されている。 2022年度は、縄文時代の東京湾内の貝塚から出土する鯨類骨からDNAを抽出してミトコンドリアDNA解析を行った。カマイルカやハンドウイルカ、オキゴンドウなどのDNA解析を行った結果、東京湾に現在生息する個体群のミトコンドリアハプロタイプと同じものであることが解明された。海棲羊膜類は高い移動能力を有するが、それにもかかわらず母系群の分布域が5000年近く不変であることは、彼らの種分化を考える上で重要なデータである。本研究成果を、英文論文にまとめて投稿した。 また、ニホンツキノワグマの過去の種間交雑を解明して、論文として公表した。大洋とは逆に、地理的に隔離された日本のような島嶼に生息する固有種(亜種)でも、大陸に生息する近縁個体群との交雑が確認された。この事実は、種分化とは何かを考える上で重要である。
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