2018 Fiscal Year Research-status Report
RADseq比較ゲノム解析による照葉樹林の生物間ネットワークの変遷過程の解明
Project/Area Number |
18K06381
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
青木 京子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 寄附講座助教 (70378537)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 分子植物地理 / 系統地理 / 遺伝的多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在の生物の地理的分布は,現在の環境条件だけでなく,過去の環境や地史の影響などの歴史的要因も強く受けている。今年度は,日本の照葉樹林の優占樹種であるスダジイ(ブナ科)について,ESTに由来するマイクロサテライトマーカー27対による遺伝子多型の解析から集団変遷の歴史を推定し,スダジイが氷期の寒冷期に日本のどの地域に生き残っていたのかを推定した。Approximate Bayesian computation (ABC) 法を用い,スダジイ個体群の系統関係や個体数の変動を,約10万年前まで遡り複数のモデル(琉球と九州のみにレフュジア,琉球と太平洋岸に複数のレフュジア,琉球と本州東部にレフュジア等)を構築して比較検討した結果,琉球グループ(奄美群島以南)と西日本グループ(九州南部付近)が最も古くから存在し,その後,西日本グループから東日本と日本海のグループが分岐したことがわかった。成立時期を推定すると,これら4つのグループは最終氷期最寒冷期前には既に成立していたことが示唆された。また,種分布予測モデリング(SDM)により氷期の気候を推定しスダジイの当時の分布を予測すると,太平洋岸の南部に最終氷期最寒冷期中も生育可能な環境があったことが示された。このことからスダジイは,琉球,西日本,日本海,東日本の地域で独自に最終氷期を生きのび,氷期後に暖かくなるにつれて個体数を増やしたと考えられる。本成果についてとりまとめた論文を投稿し,受理された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サンプル採集・整理状況は概ね順調であり遺伝子解析も順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
収集したサンプルの遺伝子解析を進める。
|
Causes of Carryover |
遺伝子解析に時間がかかり年度内に支出が間に合わなかったため。 次年度の遺伝子解析費用に用いる。
|