2021 Fiscal Year Research-status Report
群集形成の緯度変異性:「バイオマス補償」がもたらす生物多様性
Project/Area Number |
18K06384
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
新垣 誠司 九州大学, 理学研究院, 准教授 (10452963)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生物多様性 / 潮間帯 / 魚類 / バイオマス補償 / 緯度勾配 |
Outline of Annual Research Achievements |
高い生物多様性をもたらす要因は何か?今も議論が続く課題である。生物群集の基礎となる資源・エネルギー量の増加を仮定する説が多い中、近年、資源・エネルギー量が一定でも体サイズが小型化することで種数や個体数が増加する現象:「バイオマス補償」を見出した。この現象は、多様性の創出プロセスを解く新たな鍵となりうる。 本研究は、まず、岩礁性タイドプール魚類群集を対象に北日本から台湾におよぶ12地域36地点で同一プロトコルによる野外調査をおこない、南日本でみられた「バイオマス補償」がより広域的に見られる現象であるかを検証する。次に、群集特性と環境・空間特性に見られる緯度変異性とそれらの相互関係を精査し、バイオマス補償の成立する条件を明らかにする。そして、群集形成と多様化のメカニズムに関する新たな理論の構築を将来的な到達目標とする。 以上の目的に対して、令和3(2021)年度は、COVID-19の影響により実施できずにいた野外調査を種子島(6月)の3地点と紀伊半島(7月)の5地点でそれぞれ実施した。また、沖縄での定期群集調査を約2年ぶりに再開し、10月、12月、3月の計3回実施した。天草では、月1回の定期調査を予定通り通年にわたって実施した。これまでに収集したサンプルの処理と集計をおこなったほか、画像データをもとにタイドプールの表面積測定作業をおこなった。調査地のひとつ男女群島の潮間帯魚類群集の変遷に関する論文をまとめ、国際誌Marine Biodiversityに掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
COVID-19の影響により、特に野外調査の予定に遅れが生じている。基礎データの収集が未完のため、主要なデータ解析が実施できずにいる。令和3(2021)年度は、これまで実施できていなかった野外調査のうち、種子島と紀伊半島での調査を実施することができた。また、沖縄での定期群集調査を約2年ぶりに再開し、10月、12月、3月の計3回実施した。天草では、月1回の定期調査を予定通り通年にわたって実施した。これまでに収集したデータを活用し、調査地のひとつ男女群島の潮間帯魚類群集に関する論文をまとめ、国際誌Marine Biodiversityに掲載した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4(2022)年度は、まだ実行できていない房総半島周辺と種子島の一部での野外調査の実施を最優先とし、天草・沖縄での定期調査を並行して実施する。また、データが集まり次第、主要な解析作業に取り掛かれるよう、サンプル及び写真資料の整理を進めるとともに、派生的な成果についても論文化を進める。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、予定していた野外調査の一部が実施できなかった。延期分の野外調査を2022年度に実施するための費用とする。
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