2019 Fiscal Year Research-status Report
クマノミ類をモデル系とした海洋適応放散の進化遺伝機構
Project/Area Number |
18K06385
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
小北 智之 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (60372835)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 適応放散 / 海洋 / QTL解析 / 魚類 / ニッチ分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子流動を妨げる物理的障壁に乏しい海洋,特に熱帯・亜熱帯の浅海域における極めて高い種多様性の存在は大きな謎であるが,当該海域に存在する生物由来の多様な生息場所ニッチにより駆動される生態的種分化現象が著しい多様性の創出機構として注目されている.それでは,このような種分化現象の鍵を握るニッチシフトと関連した表現型適応はどのような進化遺伝機構によって生じたのだろうか?イソギンチャクと共生するクマノミ属魚類はインド-太平洋の浅海域で繁栄し,その種多様性は生態的種分化の最も顕著なパターンである適応放散的種分化によって創出されたことが示唆されている.本研究では,共生イソギンチャク種に対するスペシャリストからジェネラリストへの進化が急速な種形成を駆動したクマノミ類をモデル系として,新規ニッチへの進出を可能とする表現型進化機構を多角的な生態ゲノミクスの手法からアプローチすることにより,その背後にある遺伝基盤の特徴を描き出すことを目的としている. しかし,この適応放散は,その推定年代が,この分野の有名なモデルであるイトヨ類やシクリッド類等と比較してかなり古く,集団ゲノミクスやゲノムワイド関連解析の有効性が期待しにくいこと,強い交配前隔離と関連して野外交雑集団が存在しないことから,種間交雑家系を用いた形質遺伝学的アプローチ(QTL解析)の導入が不可欠である. そのために,ジェネラリスト型のクマノミとスペシャリスト型のカクレクマノミ,ジェネラリスト型のツーバンドアネモネフィッシュとスペシャリスト型のモルディブアネモネフィッシュの2つの独立した交雑家系を作出し、現在F1交雑個体を育成中である.QTL解析には、F2世代または戻し交雑家系の作出が不可欠であるが、当該年度中にF1交雑個体が成熟サイズまでは達しなかった.そのために,本年度はF1世代の表現型(形態・行動形質)の定量解析のみを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
クマノミ類の適応放散は,その推定年代が,この分野の有名なモデルであるイトヨ類やシクリッド類等と比較してかなり古く,集団ゲノミクスやゲノムワイド関連解析の有効性が期待しにくいこと,強い交配前隔離と関連して野外交雑集団が存在しないことから,種間交雑家系を用いた形質遺伝学的アプローチ(QTL解析)の導入が不可欠である.そのために,ジェネラリスト型のクマノミとスペシャリスト型のカクレクマノミ,ジェネラリスト型のツーバンドアネモネフィッシュとスペシャリスト型のモルディブアネモネフィッシュの2つの独立した交雑家系を作出し、現在F1交雑個体を育成中であるが、QTL解析には、F2世代または戻し交雑家系の作出が必要である。しかし、当該年度中にF1交雑個体が成熟サイズまでは達しなかったため、QTL解析が実施できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、F1交雑個体を育成中であり、これらの個体が成熟次第、人工授精によりF2世代または戻し交雑家系を作出し、QTL解析を実施する。F2世代または戻し交雑世代を用いた表現型解析は幼魚で可能であるため、F1交雑個体が成熟さえすれば、令和2年度中に実施が可能である。
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Causes of Carryover |
クマノミ類の適応放散は,その推定年代が,この分野の有名なモデルであるイトヨ類やシクリッド類等と比較してかなり古く,集団ゲノミクスやゲノムワイド関連解析の有効性が期待しにくいこと,強い交配前隔離と関連して野外交雑集団が存在しないことから,種間交雑家系を用いた形質遺伝学的アプローチ(QTL解析)の導入が不可欠である.そのために,ジェネラリスト型のクマノミとスペシャリスト型のカクレクマノミ,ジェネラリスト型のツーバンドアネモネフィッシュとスペシャリスト型のモルディブアネモネフィッシュの2つの独立した交雑家系を作出し、現在F1交雑個体を育成中であるが、QTL解析には、F2世代または戻し交雑家系の作出が必要である。しかし、当該年度中にF1交雑個体が成熟サイズまでは達しなかったため、QTL解析が実施できなかった。現在、F1交雑個体を育成中であり、これらの個体が成熟次第、人工授精によりF2世代または戻し交雑家系を作出し、QTL解析を実施する。F2世代または戻し交雑世代を用いた表現型解析は幼魚で可能であるため、F1交雑個体が成熟さえすれば、令和2年度中に実施が可能である。
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