2020 Fiscal Year Research-status Report
クマノミ類をモデル系とした海洋適応放散の進化遺伝機構
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18K06385
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
小北 智之 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (60372835)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生態的種分化 / 海洋生態系 / 形質遺伝学 / サンゴ礁 / 魚類 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱帯・亜熱帯域の浅海域は,地球上で最も種多様性が高い生態系の一つである.熱帯・亜熱帯海域には造礁サンゴ類に代表される生物による複雑で微細な生息場所が創出されており,多様な生息場所ニッチの存在により駆動される生態的種分化が広い分類群にわたって普遍的に生じているとの予測がある.このような生態的種分化現象ひいてはその顕著なパターンである適応放散現象の実態やその歴史的過程を含めた詳細な進化機構を追究するためには,ニッチ分化の背後にある表現型の適応進化および副産物としての交配前隔離の遺伝・ゲノム基盤を描き出すことが重要である.本研究は,当該現象が強く示唆されるクマノミ属魚類をモデル系とし,研究代表者が初めて確立した人工授精技術と種間交雑家系を基盤とした形質遺伝学的アプローチを導入することで,未開拓領域である海洋生物多様性創出の進化遺伝基盤を追究する試みである. 当該年度は,新型コロナウイルスの影響で,当初の予定通りに研究を進展させることができなかったが,作出した種間交雑個体(クマノミとカクレクマノミのF1交雑個体)の形質発現に関する解析を行い,以下の結果を得た.(1)当該年度にF1交雑個体が成熟が予想される体サイズには達しなかったが,その生殖腺は,既報の純系個体の生殖腺の発達パターンと同様の特徴を有したことから,両種間に雑種不妊,つまり交配後隔離が進化していないことが強く示唆された.(2)雑種の形態形質(体形,模様,脳外形)の発現パターンを精査したところ,体形や模様と関連した多くの形質において,両親種の形質値の中間的な値を示したが,どちらか一方の種に近い形質値を示すものも存在した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
(1)新型コロナウイルスの社会的影響で,充分なフィールド調査ができない状況になったこと,及び(2)作出した交雑個体の成長・成熟が予想以上に遅く,F2(または戻し交雑)個体の作出が遅れているため.
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Strategy for Future Research Activity |
上記した問題点に関して,(1)新型コロナウイルスの社会的影響は予測できない側面があるが,順応的にフィールド調査を進めていく予定であり,また(2)に関しては,もう少しで成熟が予測される体サイズに達しそうな状態まで来ているため,今年度にF2(または戻し交雑)個体の作出を実施したいと考えている.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの社会的影響のため,当初予定の調査・実験ができなかったため。
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