2019 Fiscal Year Research-status Report
Structural evolution of the mandibular feeding system in Ostracoda –Overcome of the bauplan dilemma in bivalved arthropods-
Project/Area Number |
18K06388
|
Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
山田 晋之介 国際医療福祉大学, 医学部, 助教 (30772123)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 節足動物 / 貝形虫 / 外骨格 / 大顎 / 超微細構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
開始から2年目となる本年度は,Podocopa目の一種Heterocypris incongruensを用いて,電子顕微鏡観察を集中的に行った.まずは,個体のあらゆる部位を撮影した電子顕微鏡観察の結果から,本種における最良の組織写真を得る試料作成条件を導き出した.そして,本種の大顎を固定中で解剖した後,予備観察で導き出した最良の試料作成条件を経て,樹脂ブロックを完成させた. 透過型電子顕微鏡(TEM)による観察では,次に述べる新しい知見を得た.まず,Podocopa目貝形虫類であるHeterocypris incongruensの大顎底節には,多数の神経細胞のユニットが点在していることがわかった.この数は,先行研究で報告されている十脚類のゾエア幼生(貝形虫類より遙かに大きい甲殻類)の大顎底節に分布する神経細胞ユニット数の3倍近くになる.さらに,その分布様式も特徴的であることがわかった.Heterocypris incongruensの大顎歯列は,切歯状の歯列と感覚毛様に密集したクチクラ突起から構成されているのだが,切歯部分については神経細胞のユニットは両端部と中央部に分布している一方で,感覚毛様の突起については神経細胞のユニットが中央に分布するのみであることが判明した.しかしながら,感覚毛様の突起は大顎底節内部にてクチクラネットワークを形成しており,中央部の神経細胞のユニットはクチクラネットワークの歪みの伝達により,端部の物理的刺激まで感じ取ることができると考えられる.また,神経細胞ユニットは1つの感覚細胞と2つの鞘細胞から構成されるタイプと,2つの感覚細胞と2つの鞘細胞で構成される2種類が存在することもわかった.この感覚細胞の超微細構造を観察した結果,感覚細胞は典型的な機械受容器の特徴を示しており,化学受容器の特徴を示す感覚細胞は大顎底節には存在しないことがわかった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
困難が予想されていた大顎底節における神経細胞ユニットの観察が順調に進み,Podocopa目の普通種におけるTEM観察の結果に,ある程度の目途が付いた.今後は,原始的な体制を持つ分類群であるPlatycopa目やDarwinula上科といった,大顎歯列に普通種とは異なった特徴を持つ貝形虫類に着手していく.そして,最終年度では連続光学顕微鏡切片をベースとした,大顎筋-骨格系の立体再構築を行うつもりである.
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度では,貝形虫類における主要分類群の大顎底節内の神経細胞ユニットの種類と配置を,TEM観察によって明らかにしていく.すでにPodocopa目貝形虫においては,SEMとTEMによる観察結果が揃いつつある.さらに祖先的分類群であるPlatycopa目やDarwinula上科,Bairdaia上科における神経細胞ユニットの詳細を明らかにした後,貝形虫類の主要分類群における,大顎筋-骨格系の連続光学顕微鏡切片のデータを,ソフトウェアAmiraを用いて立体再構築像を得るつもりである.また,最終年度の終わりまでには,それまでに取得した解剖学・形態学的データに基づいた研究成果の一部を,関連学会(日本動物分類学会・日本古生物学会・日本節足動物発生学会)で発表した後,論文として国際学術誌に投稿する.そして,最終年度の実験によって得た成果も同様に,順次論文として発表していく予定である.
|
Causes of Carryover |
本年度は、TEMによる超微細構造の観察に的を絞り,まずはダイヤモンドナイフを購入したので,立体再構築のソフトウェアに関しては最終年度へと購入を延期した。また,非常事態宣言を受けての学会中止によって用途変更を余儀なくされた予算は,ソフトウェアを処理するためのグラフィックボードや,立体再構築像を描くためのペンタブの購入に充てるつもりであり,余った予算は,仕上げのデータを取得するための,TEM試料およびSEM試料作成のための消耗品に全て費やす予定である.
|
Research Products
(3 results)