2020 Fiscal Year Research-status Report
Structural evolution of the mandibular feeding system in Ostracoda –Overcome of the bauplan dilemma in bivalved arthropods-
Project/Area Number |
18K06388
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
山田 晋之介 国際医療福祉大学, 医学部, 助教 (30772123)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 節足動物 / 貝形虫 / 外骨格 / 大顎 / 超微細構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
開始から3年目となる本年度は,Heterocypris incongruensを用いた電子顕微鏡観察を集中的に行い,大顎底節における神経ユニットの分布と超微細構造を詳細かつ三次元的に解明することに力を注いだ.その結果,前年度までに明らかになっていた神経鞘細胞の超微細構造に加え,神経受容細胞の超微細構造も確実に把握することができた.具体的に述べると,受容細胞の外節にある軸子が9+0構造を持ち,かつ電子密度の高いAチューブにアームが認められること,受容細胞内節には太い繊毛小根が含まれ,繊毛小根は鞘細胞中の有桿体とデスモゾームで接着すること,が確認できた.これらの超微細構造は,節足動物の機械受容器として機能する神経細胞に見られる典型的な構造である.これら電子顕微鏡観察の結果に加え,2つの神経受容細胞を持つユニット(heterodynal scolopidium)と1つの神経受容細胞を持つユニット(monodynal scolopidium)の間で構造的な違いが観察されなかったことから,受容細胞の数に関わらず,これらの神経ユニットは機械受容器としてのみ機能していることがわかった.しかしながら,両者の間では空間分布に違いが観察され,heterodynal scolopidiumは大顎切歯の歯根部に接続しているのに対し,monodynal scolopidiumは大顎切歯の歯牙内部に接続していることが判明し,この空間分布の違いは機械受容する刺激の違いを表していると考えられる.すなわち,heterodynal scolopidiumは大顎底節にかかる圧力を感知(圧覚)するのに対し,monodynal scolopidiumは切歯が物に触れる刺激を感知(触覚)する.今年度はコロナ禍の影響を受け,野外調査が遂行困難な状況となったため,多くの標本採集を断念せざるを得なかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍による影響でフィールドワークを遂行できず,多くの分類群の標本採集が困難となったため,やむを得ず研究計画を延長した.今後は,原始的な体制を持つ分類群であるPlatycopa目やDarwinula上科といった,大顎歯列に普通種とは異なった特徴を持つ貝形虫類に着手し,連続光学顕微鏡切片をベースとした大顎筋-骨格系の立体再構築を行う.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では,貝形虫類における主要分類群の大顎底節内の神経細胞ユニットの種類と配置を,TEM観察によって明らかにしていく.すでにPodocopa目貝形虫においては,SEMとTEMによる観察結果が揃いつつあり,Cypris上科貝形虫の電子顕微鏡観察によって,観察のポイントとノウハウは完全に確立された.今後は祖先的分類群であるPlatycopa目やDarwinula上科,Bairdaia上科における神経細胞ユニットの詳細を明らかにした後,貝形虫類の主要分類群における,大顎筋-骨格系の連続光学顕微鏡切片のデータから立体再構築像を得るつもりである.また最終年度では,それまでに取得した解剖学・形態学的データに基づいた研究成果の一部を,関連学会で発表した後,論文として国際学術誌に投稿する.そして,最終年度の実験によって得た成果も同様に,順次論文として発表していく予定である.
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Causes of Carryover |
本年度はコロナ禍の影響により,フィールドワークを遂行することが困難であったため,Cypris上科以外の主要分類群を採集することができなかった.そのため延長した最終年度では,まずこれら主要分類群の標本入手と,立体再構築のソフトウェアを購入し,Cypris上科貝形虫の大顎筋-骨格系の立体再構築像を得ることを優先して行う.フィールドワークや学会旅費,およびソフトウェア購入以外の予算は,仕上げのデータを取得するための,TEM試料およびSEM試料作成のための消耗品に全て費やす予定である.
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