2018 Fiscal Year Research-status Report
Species diversity of cryophilic marine ostracods; the history clarified by fossil records
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18K06390
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小沢 広和 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (20632045)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生物多様性 / 貝形虫 / 分類 / 新生代 / 北西太平洋 / 海洋環境変動 / 日本海 / 化石 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本と周辺の海生貝形虫類の特定の分類群について、現在の海洋における好適な生息環境条件、誕生から繁栄までの古環境学的変遷、種間の系統上の近縁関係を読み解くために、次の3手法による検討を計画した。その3つは、(1)化石の初出年代と生息環境の解明、(2)現生種(現在生きている種)の多くが好んで生息する環境条件(水温・塩分など)の特定、(3)ポア(毛細管)数解析による種間の系統上の近縁関係の検討、である。また同時に貝形虫化石群に基づく日本と周辺の古海洋環境変動史も研究対象とした。 本研究は、好冷性種を含む分類群について、当該年度には主に上記3手法中の2つの「化石の初出年代・生息環境の解明」と「現生種の多くが好んで生息する環境条件の特定」を行った。材料として日本および周辺産の化石・現生種標本を用い、2科の複数属について、北西太平洋縁における多様性変遷史の議論するのに必要な、複数種の化石産出記録データと、現生種の生息環境条件(水温・塩分など)データを初めて入手した。今後はこれらのデータと議論について、国内外の学術雑誌と学会講演で公表予定である。 また本研究は、関東地方南部(相模湾沿岸)の第四紀更新世(60万年前)の地層(相模層群・長沼層)産貝形虫化石群データ(Ozawa, 2009掲載)を新たに別手法(現生アナログ法)で解析し直し、古海洋環境とその変動史を再検討した。その結果、海洋同位体ステージ15(MIS15)時の古相模湾の水温は現在よりも夏はやや高く、冬はやや低かったことを具体的な推定水温値と共に初めて明らかにした。この結果は、日本沿岸の海洋環境変動史を解明する上で重要である。これらの成果は学術雑誌に1編の論文として公表された。 さらに相模湾と周辺の野外調査で得られつつある、現生種の生息環境と繁殖生態に関する研究成果について、学会講演と投稿論文原稿を準備している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
関東地方と関東以北に分布する新生代の地層の堆積岩サンプルを用いて、300万年前以降の複数の地層産の海生貝形虫化石を抽出し、分析に必要な個体数を確保する作業の途上である。 この作業においては、貝形虫化石の産出密度(特に幼体段階の標本の密度)が予想より極めて低い地層や、ほとんど産出しない地層が事前の想定よりかなり多かった。これは貝形虫類の死後に、遺骸殻が地層内で化石化する過程で、小型の幼体ほど大型の成体より地下水等の影響をより大きく受けやすく、殻が溶解しやすいために化石化しにくいため、産出数が少ないと推測される。そのため目的(3)「ポア(毛細管)数解析による種間の系統上の近縁関係の検討」については、多くの保存の良い海生貝形虫種の化石標本(特に幼体)の入手と収集が今のところ困難であり、十分な標本数を収集できず、化石抽出・収集作業に予想より多くの時間が掛かり、作業が予定より遅れている。この他には、複数の地層産の海生貝形虫化石群データを用いて、日本と周辺における海生貝形虫相の多様性変遷史と古海洋環境変動史の検討を進めている。 また対象とする海生貝形虫種の生息が予想される相模湾と周辺で、現生種(現在生息する種)を季節ごとに採取している。これらのデータに基づき、貝形虫相の種構成、各種の出現時期、種ごとの繁殖生態を含む生活史を解明し、各種の好適な生息環境条件(水温範囲など)を、一部の種について特定しつつある。 これらの調査研究によって現在までに得られた、相模湾と周辺に生息する海生貝形虫種の生態、複数の地層産の海生貝形虫化石群のデータ、古海洋環境および種多様性変遷史等については、研究成果を国内外の学術雑誌や学会講演で随時公表する予定で、現在準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は関東地方とそれ以北に分布する、新生代の地層の堆積岩サンプルから、300万年前以降の複数の地層産の海生貝形虫化石を抽出し、分析に必要な個体数を確保する予定である。この作業によって、より多くの化石標本(特に幼体段階の標本)を収集できるよう努める。また各種の時代的な出現様式(初出年代等)、海生貝形虫化石相の多様性変遷史、古海洋環境変動史を検討していく。 これらの海生貝形虫化石標本の収集が思うようには捗らなかった場合は、対象とする海生貝形虫種の生息が予測される相模湾と周辺で、現生種(現在生きている種)の個体を引き続き季節ごとに採取し、出現時期や繁殖生態を調査する。これらのデータに基づき、貝形虫相の種構成、各種の出現時期、種ごとの繁殖生態を含む生活史を解明し、各種の好適な生息環境条件(水温、塩分、溶存酸素量、pHなどの生息可能範囲)をさらに詳しく特定する。 また上記の研究の途上で入手した現生および化石貝形虫群集のデータに基づいて、新生代の過去の海洋環境変動を明らかにすると同時に、好冷性種を含むより多くの種について、現在の好適な生息環境特性を解明していく予定である。 上記の一連の研究で得られた、新生代の海生貝形虫類の多様性変遷史、海生貝形虫化石群に基づく新生代の古海洋環境変動史、相模湾等に生息する海生貝形虫類の生態に関するデータと議論を含む成果の公表については、学会講演および学術雑誌投稿用原稿を、随時準備していく予定である。
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Causes of Carryover |
一部の物品を、当初の見込みより低価格で購入することができた。 そのため、直接経費未使用額として、777円が生じた。 この残額については、次年度に物品費の一部として使用する予定である
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[Presentation] Phytal ostracod fauna and its seasonal changes inhabiting eelgrass Zostera at Sotoura Bay of Izu Peninsula, central Japan2018
Author(s)
Ozawa, H., Nakao, Y., Nakai, S., Ishii, H., Kaneko, N., Sato D., Matsumoto, K. and Ito, S.
Organizer
The Third Asian Ostracod Meeting, Kanazawa (JAPAN)
Int'l Joint Research
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