2018 Fiscal Year Research-status Report
ダニ類最後のエニグマ(謎):ニセササラダニ類の進化的変遷
Project/Area Number |
18K06392
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
島野 智之 法政大学, 自然科学センター, 教授 (70355337)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蛭田 眞平 独立行政法人国立科学博物館, 分子生物多様性研究資料センター, 特定非常勤研究員 (80624642)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 系統分類学 / ダニ学 / 胸板ダニ上目 / 汎ケダニ目 / 汎ササラダニ目 |
Outline of Annual Research Achievements |
安倍ほか(2009)が提案した日本産ダニ類の高次分類群の和名に不適切なものがあったので,島野(2018)として高次分類群の一部和名改称をおこなった.また,島野(2018)では,あわせて,近年のダニ類の高次分類体系に関する様々な報告を総説としてまとめた. その上で,クシゲマメダニ亜目と,ニセササラダニ亜目および,ササラダニ亜目の下等な分類群について,新たに形態及び遺伝子解析用にサンプリングを行いながら,形態情報から同定後,塩基配列解析をおこなっている.この系統解析をより正確に行うため,胸板ダニ上目のすべての18S rDNAをGenBankから収集し,内容を確認し利用可能な物を選別後,2次構造にもとづいて系統樹を作成している.また,さらに遺伝子座を増やすために,primerの作成を行っている. 特に,過去に遺伝情報の報告がないクシゲマメダニ亜目に関して,遺伝情報が得られ.この遺伝情報に基づいて胸板ダニ上目の系統樹を作成した.クシゲマメダニ亜目とニセササラダニ亜目は本来,失気門団というひとつの分類群であったが,形態情報によって2つの亜目とすることが提案された.得られた系統樹ではクシゲマメダニ亜目は汎ケダニ目内でクレードをつくり,ニセササラダニ亜目は汎ササラダニ亜目内でクレードをつくった.クシゲマメダニ亜目とニセササラダニ亜目という体系は18S rDNAからは支持された. 研究の過程で得られた汎ケダニ目,及び,汎ササラダニ目の未記載種については,同時に得られている遺伝情報とともに,新種としてこれらを命名し公表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採集と同定の難しいクシゲマメダニ亜目とニセササラダニ亜目,および,採集の難しいササラダニ亜目の下等な分類群について採集することが出来たことが,最初の難関であったが,サンプリングを行うことができたこと.さらに,形態情報から同定をおこなうことができ,シークエンスまで行うことができたという研究の進展は初年度としてはおおむね順調であると言って良い. その結果も,以前,失気門団というひとつの分類群であったが,形態情報によって2つの亜目とすることが提案されたクシゲマメダニ亜目とニセササラダニ亜目であるが,18S rDNAから得られた系統樹では,ニセササラダニ亜目は汎ササラダニ亜目内でクレードをつくったため,2亜目の体系は18S rDNAにもとづいた系統樹からは支持され,当初の予想を裏付けており,次の解析に結びつけたいと考えている. 社会への論文発表を経て還元もできている.近年のダニ類の高次分類体系に関する様々な報告の調査を総説としてまとめ,この分野での系統推定の唯一の日本語の解説として報告することが出来た.また,あわせて,問題のあった安倍ほか(2009)が提案した日本産ダニ類の高次分類群の和名を,島野(2018)で,高次分類群の一部和名改称をおこなうことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
現在の方向で研究を続けるとともに,今後,特にタクソンサンプリングの観点から.さらにクシゲマメダニ亜目とニセササラダニ亜目,および,採集の難しいササラダニ亜目の下等な分類群について必要な分類群の標本数を増やし,系統解析の精度を上げる.特に遺伝子座を増やす事を検討したい.また,得られている未記載種などについても,分類学的に整理し報告を行う.
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Causes of Carryover |
前年度,思いのほか研究が進み,解析のために前倒し請求をしたが,その後,研究費を節約することができたため.
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