2018 Fiscal Year Research-status Report
渓流沿いおよび蛇紋岩地における植物の環境適応プロセスの解明
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18K06393
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
福田 達哉 東京都市大学, 知識工学部, 教授 (00432815)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 環境適応 / 形態的分化 / 渓流沿い / 蛇紋岩地 |
Outline of Annual Research Achievements |
比較的に広い分布域を持つ植物は、特殊環境へ侵入する際に、何らかの形態学的変化によって適応することが多くの分類群において認められている。モクセイ科イボタノキ属の樹木であるネズミモチは、予備的調査から渓流沿いや蛇紋岩地においても生育を確認することができたために、それぞれの環境に適応した形態的変化を明らかにすることは、これまでの研究結果との比較が可能になってくるだけではなく、これまでは草本植物が中心であった渓流沿いと蛇紋岩地への適応形態比較研究において、木本植物における新たな適応様式に関する知見が明らかになると考えられる。そのために形態学的解析を行った結果、渓流沿いと蛇紋岩地のどちらにおいても葉は肥厚化しているものの狭葉化を起こしていないことが明らかとなった。この狭葉化を起こしていないという結果は、これまでの渓流沿いや蛇紋岩地の環境に適応する植物における研究結果とは異なり、木本植物の場合は狭葉化といった外部形態的な変化が伴わなくとも渓流沿いや蛇紋岩地といった特殊環境に侵入することができることが明らかとなった。また本研究の結果から、渓流沿いや蛇紋岩地の環境において、葉が有意に肥厚化しており、この背景には、それぞれの環境においてネズミモチへの光を遮断する植物が存在していない特殊な植物相のなっていたことに加え蛇紋岩地の場合は土壌水分量が少なかったことにより、通常の山林や山地のネズミモチに比べて肥厚化していたのではないかと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備的調査によって進めてきたネズミモチに関して、新たに比較的多くの集団を用いて特殊環境への進出の際の形態的分化過程を明らかにすることができ、さらにこれまでに発表してきた草本植物の結果から予想していた結果と異なり、新たな研究の方向性を見つけることができたために、概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今回明らかになった渓流沿いおよび蛇紋岩地におけるネズミモチの葉の形態学的特徴が、細胞レベルまで類似しているのかを明らかにするため、これまでの研究計画通りに得られた標本を用いて、解剖学的研究を進める予定である。また本研究を進める際に、ネズミモチとともに渓流沿いや蛇紋岩地に生育している木本植物を発見することができたために、異なる木本植物を用いて解析を始めることにより、木本植物における共通点の発見につながると考えられる。そのために、ネズミモチの解剖学的研究と同時並行的に研究を進めることを考えている。
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Causes of Carryover |
当初の申請の際の価格からセール等で申請時の価格より安価に購入することができたために次年度使用額が生じた理由である。そのために使用計画としては、この次年度使用額を消耗費として使用する計画である。
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[Journal Article] Possible occurrence of reproductive isolation between two geographical clades of a laniatorid harvestman Pseudobiantes japonicus (Arachnida: Opiliones: Epedanidae) in Shikoku2019
Author(s)
Kumekawa, Y., Miura, O., Fujimoto, H., Ito, K., Arakawa, R., Yokoyama, J and Fukuda, T.
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Journal Title
Edaphologia
Volume: 104
Pages: 19-24
Peer Reviewed
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