2023 Fiscal Year Annual Research Report
Evolutionary history of Japan Sea element plants: a comparative phylogeographic approach using genome-wide SNPs
Project/Area Number |
18K06394
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
岩崎 貴也 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 講師 (10636179)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日本海要素 / 種分化 / 系統地理 / 第四紀 / 最終氷期 / 日本列島 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度はスミレサイシン類とミスミソウ類の解析をさらに進め、その系統関係や分岐年代の解明に取り組んだ。スミレサイシン類では、最初に葉緑体ゲノム全長に基づく近縁種まで含めた系統解析と分岐年代推定を行い、さらにその分岐年代推定結果を二次校正に用いて、ゲノムワイドSNPsに基づく系統解析を行った。その結果、日本海要素であるスミレサイシンは、太平洋側に分布する姉妹種のナガバノスミレサイシンと約140万前に分岐したこと、スミレサイシン内では新潟・長野以北と富山以南の間の南北分化が大きく、約10万年前に分岐したことなどが推定された。これらの分岐年代は、2022年度までに得られていた分子進化速度を元にした推定結果よりも古いが、種分化の年代としては今回の結果の方が妥当であると思われ、近縁種間や集団間であっても化石校正の重要性が示唆された。また、系統樹上での気候ニッチの分化を推定したところ、スミレサイシンが太平洋側の姉妹種と分岐するタイミングで冬季降水量に関するニッチが劇的に変化しており、ニッチ分化を伴った種分化が起きたことが示唆された。ミスミソウ類については、正確な分岐年代推定はできていないが、日本海側のオオミスミソウは太平洋側のスハマソウと姉妹分類群であり、やはりこのグループの中では最後かつ比較的最近に分岐したことが示唆された。古気候データからは、120万年前頃に日本海側気候が卓越するようになったとされており、スミレサイシンが太平洋側の姉妹種から種分化した年代はこれにかなり近い。本研究で行った解析の結果を総合すると、120万年前に日本海側気候が卓越するようになった後、様々なタイミングで太平洋側の種からニッチ分化を伴って日本海側の種が分岐した可能性が考えられる。今後、クロモジ類などの他の種群についても解析を進め、日本海要素の起源や分岐年代についてより詳細に明らかにしていく予定である。
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