2019 Fiscal Year Research-status Report
島の鳥の適応放散はなぜ起きるか―数理モデルと幾何学的形態測定学によるアプローチ
Project/Area Number |
18K06397
|
Research Institution | Yamashina Institute for Ornithology |
Principal Investigator |
山崎 剛史 公益財団法人山階鳥類研究所, 自然誌研究室, 室長 (70390755)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島田 将喜 帝京科学大学, 生命環境学部, 准教授 (10447922)
荻原 直道 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (70324605)
小林 豊 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 准教授 (70517169)
土岐田 昌和 東邦大学, 理学部, 講師 (80422921)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 適応放散 / 種分化 / 幾何学的形態測定学 / シミュレーション / 鳥類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高度な海上分散力を持つはずの鳥類が小群島内で適応放散を起こすことがあるのはなぜかを問うものである。平成31年度には以下の3点を行った。 (1) 島嶼域によく侵出しているものの、適応放散を起こさず、諸島内でくちばし形態が一様であるクイナ科鳥類について、頭骨のX線CTデータの作成を進めた。今後、くちばし形態の進化に強い制約がかかり、多様化が阻止されている可能性を、幾何学的形態測定学の手法を用いて検討する予定である。 (2) 海上分散能力が遺伝的要因によってコントロールされる数理モデルを作成し、さまざまな初期条件のもとでシミュレーションを行った。実際に適応放散が起きた群島と同様に、島間に分岐自然選択が働いていることを仮定すると、速やかに島間の移動が失われ、各島に固有の発端種が生み出されることを確認した。また、非常に興味深いことに、このモデルのもとでは、連続する2回の種分化のタイムラグが頻繁にゼロになることも確認された。種分化はこれまでふつう二分岐的に起きると信じられてきたが、3つ以上の種が同時に誕生する多分岐の種分化が適応放散の際にはふつうに起きている可能性がある。これは適応放散において、種分化と種分化のあいだのタイムラグが短縮される理由をはじめて説明するモデルである。 (3) 八重山諸島に生息するハシブトガラスは、近隣の島間で遺伝的・形態的・行動的な明確な分化を示す。これは(2)のモデルのプロセスが実際に働いてもたらされたパターンである可能性がある。この可能性を検討するため、本年度には海外産を含めたハシブトガラスの分布域全域にわたって分子データを収集し、解析を行った。八重山諸島の集団の単系統性を明らかにすることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
シミュレーション研究によって、適応放散の際になぜ種分化と種分化のタイムラグが短縮されるのかを初めて説明する成果が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
シミュレーション研究の成果は、学術上の重要性とオリジナリティがきわめて高い。今後はこの研究を最優先で行う。また、八重山諸島のハシブトガラスの研究は、このシミュレーションによって明らかにされたプロセスが自然界で実際に働いていることを示すものとなる可能性がある。今後、この研究を優先度2位の課題とする。
|
Causes of Carryover |
各地の博物館に骨格標本の閲覧のため、赴く予定であったが、骨格標本の貸し出しの許可を得ることができたため、旅費が不要となった。繰越金は、八重山諸島のハシブトガラスの遺伝学的・発生学的調査の費用等にあてる。
|