2020 Fiscal Year Research-status Report
深海底生生物の多様化はプランクトン幼生分散によって引き起こされるのか?
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18K06401
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
渡部 裕美 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), 准研究副主任 (50447380)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 雅子 東海大学, 海洋学部, 准教授 (50580156)
CHEN CHONG 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), 研究員 (50759602)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生物多様性 / 海洋生物 / 遺伝的多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では海洋における生物の多様化機構の解明にむけて、主に固有種によって構成される深海化学合成生物群集のプランクトン幼生の分散、海域集団間の連結性および遺伝的多様性との相関解析、さらに固有種の成長に伴う内部構造の変化の解明を実施し、包括的に深海生物の多様化過程を明らかにすることを目的としている. 本年度は当初の予定では最終年度にあたり、国際学会などの公の場においてこれまでの研究成果を報告、知見の普及に務めることを計画していた。しかしコロナウィルス感染症拡大の影響で参加を予定していた国際学会が延期になるなど、海外渡航を伴う成果報告を計画通り実施することはできなかった。そのため、国際学術雑誌への論文の投稿など、コロナウィルス感染症拡大の影響を受けにくい方法で成果の報告の効率を最大限にすることに努めた。具体的には、深海化学合成生物群集固有種の海域の連結性(遺伝的交流)やプランクトン幼生の生態学的特徴だけでなく、生物群集組成の比較や環境の異なる海域に生息する同種個体間の形態の比較などを通じ、1) 同種であっても環境によって形態が大きく変化する(分類のキーとなる形質(硬組織など)が別種と判別されるほど異なる場合もある)こと、2) 分布が連続的であっても遺伝子流動、つまりプランクトン幼生分散の方向性に偏りがあり、生物群集組成の類似性・非類似性に貢献していること、などを明らかにすることができた。また、国際共同研究を通じ、化学合成生態系という特殊な環境にのみ分布する固有種の遺伝的背景を明らかにすることにも貢献できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はこれまで実施してきた研究成果を国際学会等の公の場で公表することを主に計画していたが、コロナ禍の影響で成果発表を予定していた国際学会の開催が延期となるなど、計画通りの実行が難しかった。一方で、渡航を伴わない成果報告の手段である論文発表等は予定していた以上の成果を上げることができているため、概ね順調に進展していると考えている。例えば、遺伝的交流の範囲を明らかにするために計画されていた研究の過程において、新種の存在やこれまで明らかにされていなかった形態の大幅な変異なども明らかになり、予想していた以上の研究の広がりを示すことができた(Chen & Watanabe 2020, Watanabe et al. 2020など)。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点でもコロナ禍の影響は続いており、国際学会等が開催されたとしても現地にて参加することは難しい。オンライン開催の国際学会での成果発表を積極的に行うとともに、引き続き論文を学術雑誌へ掲載することで成果の公表を効率的に続けていきたい。また、北西太平洋における深海化学合成生物群集の成果の蓄積は非常に限定的であり、他の海域との比較が難しいという現状も明らかになってきた。2021年から国連「海洋科学の10年」も開始されるので、科学的知見に基づく海洋生態系の理解に務めるべく、次年度も知見の蓄積と公表に貢献していきたい。
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Causes of Carryover |
国際学会に現地参加し、成果を公表するための旅費を計上していたが、コロナウィルス感染症拡大の影響で海外渡航および国際学会の開催が延期となり、計画通りに予算を使用することができなかった。次年度における成果発表用費用として使用する予定である。
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Research Products
(19 results)