2020 Fiscal Year Annual Research Report
Genetic basis of adaptive traits in stream salmonids: toward a large scale population genomics
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18K06405
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小泉 逸郎 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (50572799)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 繁殖時期 / 回遊多型 / 小進化 / 局所適応 / サケ科魚類 / メタ個体群 |
Outline of Annual Research Achievements |
かつて進化は長い時間を要するプロセスだと考えられていた。しかし、近年の研究から進化は観察可能な時間スケールでも起きていることが分かってきた。そこで、多くの進化生態学者が注目し始めたのが、生態と進化動態の相互作用である。つまり、進化は想像以上に早いスピードで起きるため個体群動態など生態的現象にも影響し、また、生態的変化が新たな進化を引き起こす、というアイデアである。しかしこの魅力的なアイデアを野外で実証した研究は非常に少ない。 申請者は空知川に生息するオショロコマ(サケ科イワナ属)のメタ個体群を対象に、これまで20年間にわたり膨大な生態・遺伝データを蓄積してきた。さらに、野外調査と共通環境下飼育実験から、繁殖時期や回遊性といった個体群間分化に関わる重要な形質において局所適応が起きていることを明らかにしている。本研究では、これらの形質に関わる遺伝的基盤を調べ、大規模な生態–進化動態研究を行うためのプラットフォームを確立した。 当初は制限酵素をもちいてゲノム全体からまんべんなく変異(SNP)を探索するRAD-seq、およびそれを改良したRapture(RAD+ capture sequence)を予定していたが、コロナ禍で海外の共同研究者のもとに行けなかったこと、ゲノム解析技術の更なる発展があったことから、ゲノム全体を浅く読むlcWGS(low coverage whole genome sequence)に切り替えた。自然の滝の上下の個体群3反復、早期繁殖群(8月下旬~9月上旬)と後期繁殖群(11月以降)で、 合計78個体のlcWGSを行った。得られたデータは近縁種のドラフトゲノムをリファレンスとしてアセンブリーを行った。GWASにより繁殖時期や回遊性にかかわる候補遺伝子がいくつか見つかった。これらにより、今後、大規模な集団ゲノム解析を行う下準備が出来上がった。
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