2019 Fiscal Year Research-status Report
Retrogression of dispersal ability in insular freshwater fish
Project/Area Number |
18K06412
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
飯田 碧 新潟大学, 佐渡自然共生科学センター, 准教授 (30745328)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 島嶼 / 分散 / 淡水魚 / 通し回遊 / 河川 / 環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
島嶼の河川に生息する淡水魚の分散の実態・分散能力の退化の有無を明らかにすることを目的として研究を実施した。2019年度は,佐渡島の30河川,対馬の6河川,また,比較対象として本州の上越の7河川,高知の5河川にて野外調査を実施した。対象種であるハゼ科,カジカ科を採集して,それぞれの島と地域における河川と周辺状況について環境要因の計測を行った。また,大陸における比較対象として,ベトナム中部・北部でも同様の調査,沖縄島で予備的研究を実施した。これらの結果より,同じ対馬暖流域の対馬と佐渡島においても,地形や干満の影響により河川形態・環境に様々な違いがあり,同種においても生息環境や生態が異なることが明らかとなった。 採集された個体の一部,約210個体について耳石微量元素分析に供した。その結果,ヨシノボリ属では,佐渡島の個体群はわずかな個体を除いて通し回遊を行っており,分散の可能性があることが示された。一方,対馬や高知,ベトナムなどでは,ハゼ科について河川残留型 (非通し回遊・分散しない型) が確認され,それらは河川規模や地形,人工構造物などの環境に影響を受けていることが示唆された。また,個体レベルのより詳細な生息環境の解析から,ハゼ科では同種においても,島嶼間で生息環境が異なり,それらは細かな環境の違いによると推察された。またそのような差異が分散に影響する可能性が考えられた。さらに,分散に直接影響する幼生期の海洋生活期間について,約230個体の耳石分析から,同種間では地域間の違いが大きくないことが明らかとなった。 本年度の研究により,島嶼と比較対象となる地域において,分散に関係する生活史特性について明らかにすることができた。また分散について環境が及ぼす影響の可能性を示した。これらは島嶼における淡水魚の分散の有無について検討する上での重要な知見となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに予定していた佐渡島,隠岐諸島,対馬に加えて,比較対象地である上越や高知,ベトナムでの調査を実施することができた。また微量元素分析による回遊パタンや残留の有無の推定,耳石分析による海洋生活期間の推定は,多くのサンプルについて実施し,結果を得ることができた。また,成果の一部について,2019年度には9件の学会発表を行った。このように一部については計画以上に進展している。一方,飼育実験についてはまだ計画段階でありやや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は計画では隠岐諸島などいくつかの野外生態調査と微量元素分析を予定しているが,新型コロナウィルス感染症の影響により,当初5月を予定していた隠岐諸島での調査を延期している。また,他機関の共同利用の受入停止により,4月を予定していた微量元素分析を延期している。また現時点で野外調査には様々な制約があり,当初の予定,特に海外調査については中止せざるを得ない。このため,フランス領ポリネシアとの比較研究は,予備調査の結果や既存の一部の標本を用いる予定である。国内での調査や実験,分析は今後の状況をみて,なるべく当初の予定通り進められるよう計画する。またこれまでに得られている環境要因の解析を進めていく。
|
Causes of Carryover |
参加予定だった学会の旅費の一部として支出予定だったが,新型コロナウィルス感染症の流行の影響により,学会の開催が中止となったため次年度使用額が生じた。2020年度での消耗品の購入に充てる予定である。
|
Research Products
(10 results)