2019 Fiscal Year Research-status Report
弱者から見た闘争:貧弱な武器を持つオスはどのように闘うのか?
Project/Area Number |
18K06414
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
村松 大輔 奈良教育大学, 自然環境教育センター, 特任准教授 (80635417)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 雄間闘争 / ブラフ / いかさま / 野外実験 / ハクセンシオマネキ |
Outline of Annual Research Achievements |
異動により昨年度から奈良教育大学勤務となり、長期の出張が難しくなったため、調査地を近場の和歌山に変更して研究を継続している。野外調査は和歌浦干潟において7月から開始し、干潟の干出時間が長くなる大潮と週末が重なる時期を中心にハクセンシオマネキの捕獲やビデオ撮影を行った。これまでにオス178個体の捕獲・サイズ計測・個体マークを行い、うち半数の個体については鉗脚の先を光硬化樹脂でつないで直接闘争ができないように操作し、残りの個体は鉗脚の先をつながない状態で光硬化樹脂を付着させたコントロール群とした。捕獲したオスのうち146個体が通常型鉗脚、32個体が再生型鉗脚を持っていた。マーク済みの個体が80個体を超えたあたりでビデオ撮影を開始し、自然に起こる雄間闘争などの攻撃的交渉のデータを記録した。これまでに373例の攻撃的交渉(同じペアの重複を含む)を記録し、データ解析を進めている。 記録された攻撃的交渉のうち、65例はコントロール個体どうし、194例はコントロール個体と操作個体、80例は操作個体どうしの攻撃的交渉であった。これらはランダムに闘争が起きた場合に期待される頻度と有意な差はなく、実験操作を受けたオスの攻撃的交渉頻度が下がっているわけではないことを示す。また、206例は通常型鉗脚どうし、122例は通常型鉗脚と再生型鉗脚、7例は再生型鉗脚どうしの攻撃的交渉で、やはりランダムに闘争が起きた場合に期待される頻度と有意な差はなく、貧弱な再生型鉗脚を持つオスが闘争を避けているわけではないことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度から野外調査を開始することができ、順調に進んではいるものの、まだ初年度の遅れが取り戻せていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は得られたデータから詳細な闘争内容の解析や勝敗、実験操作の有無や体サイズの影響などを調べ、直接闘争が封じられた場合にブラフ(いかさま)を行う個体の勝率がどのように変化するのかについて解析を行う。また、今年度も昨年度と同様の野外調査およびデータ収集を行い、解析に耐えうるデータ量の確保を目指す。 しかし、COVID-19の蔓延に伴う外出自粛の要請により、5月現在でも野外調査の見通しが立っていないほか、学生アルバイトの協力を得ることも困難となっている。今年度は研究期間の最終年度となるが、野外調査のための時間が不足すると予測されるため、調査期間の延長を希望する。
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Causes of Carryover |
2018年度の職務上の制約により科研費を使用した出張を行うことができず、野外調査が実行できなかったため、計上した旅費をすべて2019年度に繰り越した。2019年度は野外調査が実行できたものの、2018年度の遅れを取り戻せるほどではなかったため、予算の一部を2020年度に繰り越す必要が生じた。
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