2018 Fiscal Year Research-status Report
冬尺蛾における平行進化現象の理解に向けた生活史調節機構とその遺伝的基盤の解明
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18K06415
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 哲史 京都大学, 理学研究科, 助教 (10643257)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 季節適応 / 休眠 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、生物がどのように多様化していくかを明らかにすることを目的として、フユシャク属(Inurois属)内で生じた初冬型繁殖期と晩冬型繁殖期の平行進化がどのように生じたかを明らかにする。フユシャク属の中ではクロテンフユシャクは種内で初冬型と晩冬型の二型があり、さらに近縁種でも初冬型と晩冬型の姉妹種ペアが複数存在しており、本研究では、2つの型の間での違いが生じる具体的な発育段階を特定すること、およびその違いを規定する遺伝子の探索を行う。 異時的種分化が生じていると考えられるクロテンフユシャクの初冬型と晩冬型を用いて、繁殖季節の違いが具体的にどのような生活史変異によってもたらされるものかを明らかにするため、同一環境下において飼育した。その結果、卵および幼虫の発育について初冬型と晩冬型の間で差は見られなかった。このことから両者の繁殖期の差は蛹期の発育によってもたらされるものと推定された。本種は蛹期中に休眠することから、休眠の違いが繁殖期の違いの原因となっていると考えられた。ただし、今年度の飼育では蛹の発育が悪く、休眠機構の違いについて詳細を明らかにすることはできなかった。 また、初冬型と晩冬型の違いについてゲノムからアプローチするために、晩冬型1個体を材料として、53ギガのロングリードデータおよび100ギガのショートリードデータを得た。さらに初冬型1個体から90ギガのショートリードデータも得ている。これらのデータは現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は今年度に休眠機構の違いについて概ね明らかにし、来年度の飼育実験でより詳細な機構を明らかにすることを予定していたが、今年度は休眠機構の違いについては明らかにすることはできなかった。この点については当初予定よりもやや遅れているとも言えるが、一方で、当初は来年度に予定していたゲノムデータの獲得を今年度中に済ませることができた。またリシーケンス解析用のサンプルこ今年度中に収集することもできたために、全体としては研究課題で予定している作業は大きく前進したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の飼育実験の手法を改善して、蛹期のデータを採れるように工夫する。これについては現時点で既に方策を実施している最中である。 さらに、ゲノムデータをすでに獲得できたので、この解析を進める。また、今年度中にゲノムデータを得ることができたので、実験スケジュール的に余裕ができた。そこで、クロテンフユシャクの初冬型と晩冬型および近縁種の詳しい系統関係を明らかにする予定である。
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