2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K06417
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岡田 賢祐 岡山大学, 環境生命科学研究科, 助教 (40550299)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画の大きな目的は以下である。生物は、過去の経験を記憶し、学習する。記憶・学習の至近的なメカニズムを扱う研究は多いが、いくつかの遺伝子で巧妙に制御されている。これまで、その至近メカニズムに注目が集まり、学習の進化とその適応的意義に焦点が当たっていない。本研究では、モデル甲虫を用い、実験的な選択によって生じる学習の進化と個体形質への影響を調べる。実験結果から、分子生物学的・量的遺伝学的知見を取り込んだ生態学的手法を駆使し、表現型から遺伝子レベルまでの情報を抽出し、学習行動の適応的意義を探る。 これまでの成果として、モデル甲虫として有用なオオツノコクヌストモドキを使用して、以下の研究展開をした。最初に行動の変化が神経伝達物質(生体アミン類)によって左右されることを特定した。またその変化によって、本種の行動にも大きく変化することがわかった。その行動を具体的に上げると、闘争行動、分散行動、繁殖行動と歩行活動である。これら行動形質は本種の適応度に大きく寄与するものである。また神経伝達物質は記憶と密接な関係があり、本種の学習に影響を及ぼすことが考えられる。 また量的遺伝学的解析から、本種の学習行動には遺伝的な基盤があり、また幼虫時の発育条件で投資配分も変化する可能性も示唆された。これら結果は専門の国際誌に掲載される予定である。 以上の結果を踏まえて、現在ではオオツノで記憶制御に関する候補遺伝子のホモログ遺伝子を探索している。探索した遺伝子の塩基配列の違いをシークエンス解析により明らかになりつつあり、有意なアミノ酸配列が検出された遺伝子において、RNA干渉法を行い、記憶・学習行動に関与するか調査を行いつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記に記したように、表現型及び遺伝子に関する学習のデータは蓄積された。これは、当初の計画よりも進むペースが早い。さらに、Gene Bank検索等を用いて、学習に関係する遺伝子のホモログ遺伝子をオオツノで探索することに着手している。そしてオオツノからmRNA抽出およびcDNA作製し、オオツノで機能するそれぞれの遺伝子用のPCR primer作製しており、候補遺伝子も絞れてきた。候補遺伝子について、RNA干渉法(RNAi)を行い、体形の形成に関与するかを調査できた。甲虫類ではlarval RNAi(幼虫体への二本鎖RNAのインジェクションによるRNAi法)が極めて有効である(伊藤ら2010, Tomoyasu et al. 2009)。クローニングした遺伝子についてlarval RNAi 法を用い、学習行動に関与する遺伝子のスクリーニングが成功し、一部の結果をすでに学術誌に投稿している。従って、来年度以降も計画に支障がなく、研究計画を進めることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
計画は順調に進んでおり、問題ないので、計画書通りに進めていく。具体的には、すでに確立した記憶力が異なる系統を使用し、学習能力がオスの繁殖や生態にどのように影響するかを調べる。また、オスの適応度は、飛翔能力、歩行活動量、射精行動や闘争能力に強く影響されることが分かっている。そこで、これらオスの適応度に関わる形質について、記憶力が異なる系統間で比較を行う。得られたデータから、表現型レベルで学習効果とオスの繁殖や生態の進化的な関係を明らかにする。また、遺伝的に改変した個体とコントロール処理個体の間で、オスの適応度に関係する形質を比較する。この実験から、ゲノムレベルで記憶・学習能力がどのようにオスの適応度に関わるのかが明らかになる。以上、この推進方策で研究を行う。
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