2020 Fiscal Year Research-status Report
Rapid assessment on wildlife habitat based on sound propagation
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18K06418
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
奥田 敏統 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 教授 (20214059)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 熱帯雨林 / 生物多様性 / 林冠 / 霊長類 / LiDAR計測 / ラピッドアセスメント |
Outline of Annual Research Achievements |
林冠に生息し、またアンブレラ種として、熱帯雨林構成種の種子繁殖に貢献しているシロテナガザル(Hylobates lar, 以下ギボン)に焦点を当て、彼らが個体間で交わすcallの発生頻度が森林の垂直方向の要素(林冠表面高:DSM、地盤高:DTM、林冠高:CH)と、どのような関係がみられるかについて調査を行った。また、地形とギボンcallの発生点との関連性を明らかにするために調査地内の凹凸度を表すConvex指標を20mメッシュごとに算出し、垂直方向要素と同様の解析を行った。これの要因は、ギボンが発声する際に遮蔽物の少ない場所を選択しているのではないかという仮説に基づく。たとえば、樹高が高くとも谷部などの窪地では尾根に挟まれるので、callが遠方まで届かず、ギボンのテレトリー維持としては選択されない可能性がある。調査地はマレーシア、ネグリセンビラン州、パソ保護林(学術参考林2400ha)のうち、天然林および二次林を含む約520haを対象とし、保護林内に設置された2本林冠タワーの頂上部で指向性マイクロホンを用いて音声訪探を行い、ギボンCallの発生ポイントを特定した。調査は2018年12月~2019年8月まで実施し、その間、ギボンのcall発生場所として調査地内で判定できた地点のうち2つのタワーから1.5km以内の52ポイントを分析対象とした。 その結果、call発生個所のDSMの値は調査地全体のDSMより有意に高い値を示すことが分かった。同様にDTM、CPHTもコール発生源場所のほうが調査地全体での値よりも有意に高い値を示した。Convex指数についても地形ごとにその値の違いを検証したところ、CI(凹凸指数)が高い場所(=尾根)の方が谷や斜面下部にくらべて、ギボンCallの発生頻度が有意に高いことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ギボンのcallはDTMが高く、かつ林冠高が高い場所(高木の密度が高い場所など)(尾根部)から発生し、結果的に林冠表面高(DSM)が高い場所で頻発する傾向がみられることが分かった。また、データをさらに精査したところ、ギボンの発声頻度が高い場所は調査地内の尾根筋に集中する。これまでの先行研究や本課題の調査地内で「高径で突出木層に到達する樹木は尾根部に集中すること」が分かっており、地形との林冠木、突出木の関連を明瞭に示す結果となった。得られた成果は、熱帯林が有する林冠構造の維持か彼らの生息域の保全と行動に如何に重要であるかを生物多様性の視点から主張する重要な手がかりとなり得る。さらに、マレーシアやギボンの生息が確認できている地域での森林施業の際の一つの指標として提示することができる。また、林冠面で生活する特殊な霊長類のラピッドアセスメントとして応用可能である。成果を以下の論文としてまとめ、国際誌Biotropicaへ現在投稿中である(再査読中)。 Toshinori Okuda, Haruka Matsubara, Toshihiro Yamada, Wei Chuang David Chew, Alvin Meng Shin Lau, Jacquoelyne Paska, Hiromitsu Nishizaki, Nur Shifatil Ulya binti Sidek Omar, Mohamed Zakaria Bin Husin. Spatial distribution of white-handed gibbon calls in relation to forest vertical components, Malaysia
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Strategy for Future Research Activity |
今年度もCOVID-19の感染拡大によりマレーシアへ赴いて野外調査を実施することがかなわなかった。とはいえ、マレーシアのカウンターパートとは密接に連絡を取っており、今後の研究展開(手法の改良など)について協議を重ねた。2021年度まで延長することになっており、この間渡航が可能になれば、現地調査を引き続き実施し、観測地点を増やし音声訪探精度を高める。 1.自動録音、自動訪探装置の開発を行い、実行テストを行う。 2.サーモグラフィ―をドローンに搭載し、個体分布、行動圏の特定にどの程度有効かについて調査する。 3.関係者+関連分野の研究者などでWorkshop開催を検討する。
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染拡大によりマレーシアへ赴いて野外調査を実施することがかなわなかった。海外出張に伴う海外旅費、内国交通費、現地で調達する消耗品などの支弁ができなかった。 2021年度は感染拡大状況を踏まえ、野外調査および、調査用器具に係る費用に充当することを計画している。
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