急激な個体数減少がカモシカ集団の遺伝的構造に与える影響の解明

2018 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 18K06420
• Research Institution: The University of Tokushima
• Principal Investigator: 山城 明日香 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 特別研究員(RPD) (80645565)
• Project Period (FY): 2018-04-01 – 2021-03-31
• Keywords: カモシカ / 遺伝的構造 / 糞DNA

Outline of Annual Research Achievements

本研究では、近年個体数が著しく減少した四国山地に生息するカモシカ集団に着目し、個体数が減少した前後での集団の遺伝的構造について解析し、急激な個体数減少過程に伴う空間的・時間的な遺伝的構造の変化を時系列に捉えることを目的とする。
本年度は、2009年～2017年に収集したカモシカの糞サンプルについて、GISを用いた糞塊の位置情報の整理、糞からDNAを抽出し、mtDNAD-loop遺伝子領域、11のマイクロサテライト遺伝子座、SRY遺伝子による性判定など遺伝的解析を行った。また、遺伝的構造の解析に必要な糞サンプルが不足している地域や現在カモシカの分布域が拡大傾向にある地域を中心に、新たな糞サンプルの収集を行った。糞DNAを用いて遺伝子解析を行った結果、糞サンプルの保存状態によりPCRによる増幅成功率が異なっていた。特に古いサンプルほどPCR増幅成功率が低い傾向にあった。そのため、より回収率の高いDNA抽出法について検討する必要があり、DNA抽出条件の変更などさまざまなDNA抽出法を試みた。一方、実施した糞サンプルの収集については、新しいカモシカの生息地を見つけるなど、多くの地域でカモシカの糞塊を収集することができた。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

サンプルが不足していた地域では、新たにサンプルを収集することができ期待通り研究が進展した。しかし、2009年～2017年に収集した糞サンプルの解析では、DNAの保存状態によりPCRの増幅成功率が低く、より回収率の高いDNA抽出法を検討している状況である。

Strategy for Future Research Activity

今後、以下の２点について研究を行う。
１）四国山地に生息するカモシカの糞塊の収集：前年度と同様にカモシカの新糞の収集を行う。特に最近分布が拡大した地域を対象とする。
２）カモシカの遺伝的解析：前年度に引き続き、より効率の良いDNA抽出法を検討する。その後、mtDNA遺伝子領域の解析とマイクロサテライト遺伝子座の決定、SRY遺伝子による性判別を行う。得られたデータは年度別に解析し、遺伝的構造の変化について明らかにする。

Causes of Carryover

糞DNA抽出法の見直しにより遺伝子解析の実験が遅れたため遺伝子解析用試薬などの物品費を翌年度分とした。翌年度の使用計画として、今後の研究計画であるカモシカの遺伝的解析用の試薬として使用する予定である。