2018 Fiscal Year Research-status Report
南西諸島域における造礁サンゴ群集の安定度・攪乱応答比較
Project/Area Number |
18K06424
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
中村 崇 琉球大学, 理学部, 准教授 (40404553)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | サンゴ白化 / 琉球列島 / サンゴ群集 / 攪乱 / 白化 / フィールド調査 / モニタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、サンゴ礁生態系の衰退が世界的な問題となっており、直近では、2014年から2017年に記録上3回目となる世界規模の白化現象が発生した。2016年には南琉球の石西礁湖において平均白化率96%と過去最悪の被害が記録され、中琉球に位置する沖縄島や奄美大島周辺でも高い白化率が報告されたが、その後のサンゴ群集の状況や、比較的被害頻度や程度が低かったことが考えられる中琉球以北の島々での量的ベースラインデータが不足している。そこで本年度は、中琉球の島々の周辺海域に見られるサンゴ群集の現状を定量的に把握することで、島ごとのサンゴ群集の特徴比較をおこなうことを目指した。調査では、中琉球の調査海域(沖縄島、久米島、与論島、奄美大島)でのライントランセクト法による潜水調査を実施し、各調査地点における多種のサンゴ個体群の集まりとして存在する「サンゴ群集」の特徴について、サンゴ被度・属レベル組成・多様度と併せて、底質組成や稚サンゴ密度などのデータを得た。本年度調査結果から、中琉球の対象海域において、深場(6~10m)でのサンゴ属組成では高い類似性が確認できた一方で、浅場(1~5m)においては、島ごとに著しく異なるサンゴ属組成が存在していることが明らかとなった。特に、奄美大島周辺では高被度かつ大規模なミドリイシ属の群落が記録されており、良好なサンゴ群集が浅場にも残されていることが確認できたが、沖縄島などでは浅場におけるサンゴ被度が相対的に低い状態にあることが示された。さらに、与論島では過去(2016年)のデータと比較した場合、微細・芝状藻類被度の有意な上昇が記録され、沖縄島、与論島を中心としたサンゴ群集の衰退傾向を示唆する結果が得られた。また、フィリピンで開催されたアジア太平洋サンゴ礁学会に参加し、インド・太平洋域におけるサンゴ礁モニタリングネットワークに関する会合に参加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大型台風の連続接近にともない、安全管理を徹底するため、9月下旬から10月にかけて予定していた八重山での調査実施を断念した。
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Strategy for Future Research Activity |
琉球列島の南北でのより詳細なデータを取得するため、中琉球での調査継続に加えて、北琉球(主に屋久島・種子島近辺)と、昨年度実施を断念した南琉球(主に八重山)での調査を実施予定である。加えて、初年度の調査終了後に大型の台風(24号・25号)が琉球列島を通過したため、与論島北西側の主要サンゴ群集で波浪による壊滅的な被害(物理的被害により多くのサンゴが破損・消失)が起きたとの連絡が有ったことから、被害詳細を明らかにするための追加調査を実施予定である。また、本年度は、屋外水槽での飼育実験を実施し、環境負荷影響について、呼吸量計測・光合成速度計測などをおこない、代謝のバランス変化を数値化することで客観的な評価をすすめる。これら実験で得られたサンゴ群体間や種間での温度耐性幅や差異、世代時間などを考慮することで、今後予想されている海水温変化に対応するために同種集団が必要とする時間(世代数)の推定などに必要な基礎データ取得をおこなう。
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