2018 Fiscal Year Research-status Report
competition using information among males in fish
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18K06427
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
太田 和孝 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 博士奨励研究員 (50527900)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 代替繁殖戦術 / 意思決定 / 学習 / 探索 |
Outline of Annual Research Achievements |
海産魚類ヘビギンポにおいて,異なる戦術を採用する雄間で生じる配偶機会の獲得を巡る争いにおいて,彼らがいかに情報を駆使して獲得の確率を高めているのかを明らかにするため,2018年5~7月にかけて,愛媛県宇和海において産卵行動をビデオで記録した.後日,スニーカー雄のスニーキングシーケンス内の行動とシーケンス間の行動に着目し,ビデオを詳細に解析した.前者は産卵場所への接近行動(どのようにばれずに近づくか)であり,後者は産卵場所内での場所選択(成功あるいは失敗に終わった試みの後,次は同じ産卵床内のどこに移動するか)である.接近行動に関しては,スニーカーはなわばり雄の行動をよく観察しており,その振る舞いによって移動の距離や速度を変えていることが明らかとなった.また,なわばり雄に近づくにつれ,慎重にふるまうことも分かった.これらの行動は捕食者によるストーキング行動に極めて類似していた.先行研究からはスニーカーはなわばり雄に見つかった後は被食者に類似した逃避行動を持つことも分かっており,あわせて考えると,スニーカーは捕食者の戦略と被食者の戦略を一つのスニーキングイベントでフレキシブルに用いるといえる.この成果をまとめた1編の論文が2月に受理された. シーケンス間の場所選択については現在解析を進めている最中だが,2つの戦略を持つ可能性が示唆された.1つは経験に基づく決定,もう1つはランダム探索である.つまり,本種のスニーカーは成功体験を踏襲し,失敗後はランダムな方向に逃げる.これら2つの組み合わせはトライアル&エラーと見なせる.ゆえに,本種スニーカーは正解がわからない課題(つまり出現の時期や場所に関する情報がない「場所」の探索)に対し,ヒューリスティックな手法を用いている可能性が考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
四国を襲った大雨の影響で調査期間を短縮せざるを得なかったが,調査期間中は期待通りのペースで調査ができた.また,そこから得られた成果は,期待していた物以上であり,順調に進捗しているといえる.また,本年度のデータを含めた論文が1編受理されており,この点においても順調といえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた成果のうち,未発表のもの(場所選択)について,データの追加を含しながら解析を進めていく.スニーカーの研究を進める中で,なわばり雄の意思決定もこれまで考えられてきた以上に複雑であることは間違いないと確信を得た.今後はなわばり雄の観点からの研究を進めることで,戦術間の複雑な対立関係を解き明かしていきたい.
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Causes of Carryover |
予想以上の成果があったことと,宿泊施設の変更に伴い,経費の使用に変更の必要性があったため差額が発生した.
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