2019 Fiscal Year Research-status Report
絶滅を回避したツキノワグマ地域個体群の遺伝的多様性回復の研究
Project/Area Number |
18K06428
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
森光 由樹 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (20453160)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大井 徹 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (10201964)
澤田 誠吾 島根県中山間地域研究センター, 鳥獣対策科, 専門研究員 (80555459) [Withdrawn]
川本 芳 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 客員教授 (00177750)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 遺伝的多様性 / ツキノワグマ / 常染色体マイクロサテライト / ミトコンドリアDNA / Y染色体遺伝子 / 絶滅危惧個体群 / 分布拡大 |
Outline of Annual Research Achievements |
報告者は東中国地域個体群と近畿北部地域個体群間で,遺伝的多様性が回復傾向であることを報告した(森光ら,2017)。今年度は過去のデータに,新たに捕獲された個体から得られたサンプルを加え分析した。マイクロサテライト6遺伝子座(Paetkau and Strobeck 1994. Kitahara et al.2000) (近畿北部n=105東中国n=102)を分析した。過去1991年-2004年に捕獲された個体と2013年-2018年に捕獲された個体のヘテロ接合度を比較した。1991年-2004年に捕獲された2つの地域個体群の,ヘテロ接合度は,東中国地域個体群HE 0.470,近畿北部地域個体群HE 0.498であったが,2013年-2018年に捕獲された個体のヘテロ接合度は東中国地域個体群HE 0.565,近畿北部地域個体群HE 0.599であり,それぞれ遺伝的多様性は上昇していた。捕獲場所の情報から円山川上流部で交流が始まった可能性が推測された。遺伝的多様性の上昇は,近年,地域個体群間の遺伝子交流によるもであると考えられた。そこでツキノワグマの地域間交流による遺伝子多様性維持機構の検討と繁殖個体の移出入率定量法の改善を目的に、Y染色体遺伝標識の開発を進めている。Y染色体マイクロサテライトDNA標識(Bidon et al. 2014)がツキノワグマ研究に利用できるかを検討した。9種類の標識候補につき反復配列領域のPCR増幅条件を探し、塩基配列分析により試験試料を比較した。この結果、8標識では増幅産物が得られた。実験条件が決まった4標識(Y318.1, Y318.2, Y318.4, Y318.6)で島根県と長野県の各2試料の配列を比べたところ、Y318.6では単位配列の反復変異が認められた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、昨年度の分析結果と合わせて近畿北部、東中国地域個体群の遺伝的多様性について同様に回復している結果を得ることができた。Y染色体遺伝子についても分析条件が決まり、分析検体数を進める予定である。また、今年度、昨年度収集したに加え、広島県で17検体のサンプリングと年齢査定、福井県で19検体分のサンプリング、島根県では127検体サンプル収集することができた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、関係学会での発表は中止となり、職場の業務自粛にともない分析は現在止まっている。今後、自粛解除の後、精力的に分析を進める予定である。したがって、本研究は、やや遅れていると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで収集し未分析のサンプル、広島県17検体、福井県19検体分、島根県127検体を分析する。また、サンプル収集ができなかった地域、紀伊半島個体群の検体収集を行う。今年度は最終年度のため新知見について公表を目指す予定である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で発表を予定していた学術集会、シンポジウム、野外調査が中止となり、旅費の使用が減少した。大学施設が閉鎖になり実験室での分析が実施できない状況が続いている。また年度末、試薬類の購入で一部入手困難であった。そのため、今年度の使用額は少なかった。 通常業務再開後は、旅費の使用と試薬類の購入を進める予定である。
|
Research Products
(4 results)