2019 Fiscal Year Research-status Report
What do landscape features bring genetic structure of Asian black bear populations by using landscape genetic analysis?
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18K06438
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
大西 尚樹 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, チーム長 (00353615)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大澤 剛士 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (40554332)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ツキノワグマ / 遺伝構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
ツキノワグマの遺伝構造が形成される景観的要因を明らかにするのが本課題の目的である。昨年度は北東北の個体群で解析し、農地などの人為的な土地利用や起伏などの地形的要因が現代の遺伝子流動の抵抗となっていることを明らかにした。一方、遺伝構造は過去の気候変動による移動や個体群の歴史などによる影響も関係している。そこで、東北地方よりも標高差が大きい中部地方(静岡県~富山県)のツキノワグマ個体群を今年度の解析対象とした。 同地域で回収された320頭分のツキノワグマの筋肉片からDNAを抽出し、マイクロサテライトDNA16遺伝子座の遺伝子型を決定した。また、ミトコンドリアDNA 調節領域約700塩基の配列を決定した。その結果、同地域ではマイクロサテライトDNAから6つの分集団構造をとっていることが明らかになった。それらは、伊那谷・松本盆地・上田盆地などの低地が集団を隔てていることが示唆された。ミトコンドリアDNAのハプロタイプも地域的に偏って分布しており、これはマイクロサテライトDNAのように低地が遺伝構造を隔てているのではなく、長野県の北部と南部で異なる遺伝タイプが分布していた。マイクロサテライトDNAマーカーは現在の遺伝構造を強く反映しており、盆地や川など人が多く住んでいる地域が遺伝子流動を妨げていると考えられる。一方、過去の遺伝構造の影響が強いミトコンドリアDNAの分布は、氷期に高標高域がクマにとって生息不適な環境となり、遺伝子流動を妨げていたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請当初の年度計画に従って研究は進捗している。 今年度は総説が1本と英語の原著論文が1本発行された。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度明らかになった遺伝構造について、地理情報システムを用いた統計解析を行い、景観的要因を明らかにする。
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Causes of Carryover |
年度末に予定されていた日本生態学会大会で成果を発表する予定でいたが、新型コロナウィルスの影響で大会が中止となり、大会参加のために確保していた旅費が不要になったため。 繰り越しされた予算は、論文執筆の際の英文校閲費に該当する予定である。
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