2019 Fiscal Year Research-status Report
アワノメイガ幼虫によるカビ毒産生糸状菌の体内保持・拡散機構の解明
Project/Area Number |
18K06439
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
中川 博之 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 上級研究員 (30308192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 麻衣子 国立医薬品食品衛生研究所, 衛生微生物部, 室長 (00432013)
増中 章 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター, 主任研究員 (80466010)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アワノメイガ / Fusarium / トウモロコシ / カビ毒 |
Outline of Annual Research Achievements |
アワノメイガ幼虫体内から分離されるFusarium属菌の菌種や特徴を把握するために、2018年度に引き続き2019年度も農研機構内のトウモロコシ栽培圃場においてアワノメイガ幼虫の採集を実施した。得られたアワノメイガ幼虫から糸状菌が複数分離され、形態学的・分子生物学的に同定を行ったところ、Fusarium属菌が含まれることが確認された。これらのFusarium属菌については培養後の培養液を機器分析することによりフモニシン産生も確認することができた。アワノメイガ幼虫から腸管部位を取り出し、顕微鏡観察用切片を作製して観察する条件を設定することに成功した。アワノメイガ幼虫体内におけるFusarium属菌の滞留性を確認することを目的として、蛍光標識したFusarium属菌の作製を試みた。抗生物質(ハイグロマイシンB)耐性遺伝子(hph)とGFP遺伝子(AcGFP)を連結し、糸状菌ゲノム上で転写されるように設計した糸状菌形質転換用ベクターを構築した。これを制限酵素(HindIIIまたはEcoRV)処理により直鎖状にしたものをフモニシニン生産能が確認されているFusarium属菌株(MAFF511481、511484)のゲノムDNAへの組み込みに用いた。ハイグロマイシンBにより選抜した結果、MAFF511481(1×10^7プロトプラスト)を用いて形質転換を行った場合は平均47-66の形質転換体を、MAFF511484(1×10^7プロトプラスト)を用いて形質転換を行った場合は平均55-81の形質転換体を得ることができた。人工飼料を用いたアワノメイガ幼虫の飼育については、農研機構内の協力者のラボで生育の安定化が達成されたため、継代飼育が可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度に続き2019年度も農研機構内のトウモロコシ栽培圃場においてアワノメイガ幼虫を採集し、Fusarium属と分類される糸状菌を複数分離し、一部についてはフモニシン産生を確認した。アワノメイガ幼虫から腸管部位を取り出し、顕微鏡観察用切片を作製して観察する条件を設定することに成功した。蛍光標識したFusarium属菌を作製するために糸状菌形質転換用ベクターを構築して形質転換を行い、形質転換体を複数得ることができた。人工飼料を用いたアワノメイガ幼虫の飼育については、農研機構内の協力者のラボで生育の安定化が達成されたため、継代飼育が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に得られたFusarium属菌株由来の複数の形質転換体について、各ベクターの挿入様式、フモニシン産生能、蛍光発色の有無や強度を確認・検証する。アワノメイガ幼虫から腸管部位を取り出し、顕微鏡観察する条件を設定することができたので、本年度採取する幼虫についても腸管内の顕微鏡観察を実施する。これらの手法により、アワノメイガ幼虫体内におけるFusarium属菌の滞留性の有無の観察を試みる。
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Causes of Carryover |
2020年3月に進捗成果とりまとめと次年度計画検討のための打ち合わせ会議を実施することを計画していたが、コロナウィルスの感染拡大の影響によりこれらの会議の開催を断念することになった。使用計画としては、アワノメイガ幼虫体内におけるFusarium属菌の滞留性を確認する手法として、蛍光標識したFusarium属菌の作製を試みているが、昨年度得られた形質転換体のフモニシン産生能や蛍光発色の強度によってはこの手法が有効利用できない可能性も考えられる。その場合の対策として、アワノメイガ幼虫を多数採取して、その腸管から顕微鏡観察用切片を作製してFusarium属菌の有無を直接観察する手法を併用することを考えている。そのための幼虫採取(圃場における複数回のサンプリング)や顕微鏡観察(直接観察法)にかかる消耗品入手等への使途を予定している。
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