2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K06445
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 祐樹 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究主幹 (50804126)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 旧石器時代 / 人類史 / 沖縄 / 人骨 / 動物遺骸 |
Outline of Annual Research Achievements |
沖縄島における人類渡来最初期の人類史を解明することが、本研究の目的である。そこで、沖縄島南部に所在するサキタリ洞遺跡において、更新世堆積層の発掘調査を実施した。2018年度には、特に3万~3万5千年前の地層を調査し、分層して詳細な記録をとるとともに、年代測定の材料となる炭化物等の回収に努めた。これらの地層から動物遺骸等の遺物を回収し、その整理作業を進めた。また、発掘した堆積物の水洗選別作業も一部実施し、微細動物骨等の回収も行った。これらの動物遺骸は、当時の周辺環境を推測するための材料となるほか、一部は旧石器人の食料であった可能性があるため、今後、詳細な分析を進めることで、島環境における旧石器人の食料開拓の過程が明らかになると期待される。 発掘調査と平行して、サキタリ洞遺跡で2014年に発掘して沖縄県立博物館・美術館で保管している9000年前以前の埋葬人骨の保存処理作業を進めた。主要な骨については保存処理をほぼ完了し、形態分析を進める準備が整った。今後、人骨の形態分析を進めることで、沖縄島の旧石器時代~完新世初頭の人類の形態情報を得ることができ、さらに周辺地域の先史時代人骨と比較することで、この地域の人類史を解明していくことができる。また、人骨の年代を推定する目的で、埋葬遺構周辺の堆積層調査も進め、現地で回収した炭化物等の年代測定によって人骨の年代を推測するために必要な年代情報も得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画当初に予定していたとおり、発掘作業を実施し、沖縄島への人類渡来最初期に相当する3万5千~3万年前の地層から期待していた十分な量の動物遺骸等の遺物を得ることができた。ただし、動物遺骸の大半を占めるのは小型動物が大半をしめており、絶滅シカ類の出土は予想していたよりも少なかった。この理由として、岩盤の存在によって、特に下位の堆積層が期待していたよりわずかしか発掘できなかったことが影響している。2019年度に区画を拡張して下位の地層をより多く発掘することで、この課題に対応する必要がある。 人骨の保存処理作業は予定どおり順調に進行し、形態分析を進める準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
発掘作業を継続してさらに動物遺骸を回収するとともに、遺物の整理作業、分析を進め3万5千~3万年前のこの地域における人類の動物資源利用を明らかにする。また、人骨の形態分析を進めて旧石器時代人の形態情報を得て、周辺地域の先史人骨との比較研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
「その他」として発掘調査で得た出土遺物の年代測定委託費を計画していたが、調査の結果特に最下層の堆積物が期待していたより少なく年代測定を見送ったために余剰金が生じた。次年度に区画を広げて調査を進める計画であるため、次年度に得られる遺物を用いて年代測定を実施する計画である。
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Research Products
(5 results)