2018 Fiscal Year Research-status Report
Implication of diversified polyglutamine repeat polymorphisms in human evolution
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18K06452
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
嶋田 誠 藤田医科大学, 総合医科学研究所, 講師 (00528044)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ポリグルタミン / ハンチンチン / 天然変性ハブタンパク質 / 低分子量Gタンパク質 / シグナル伝達 / 人類進化 / 分業 / 反復多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト進化過程において、ポルグルタミン(polyQ)病の責任polyQ反復座位で反復数多型が急激に多様化したのは、polyQ長の違いが神経系の機能の多様化を創出し、人類が分業社会を作る基盤となったためである、という仮説を立て、次の2つのアプローチにより検証を進めた。 第1番目として、ヒトの多型polyQの関わる相互作用のうち、神経発生のシグナル伝達経路として機能しているものを明らかにすることで、実証実験系樹立の手がかりとするため、polyQの天然変性の性質を利用して複合体を形成し、細胞質と核との間を行き来していると考えられるものを、相互作用(PPI)データベースより抽出した。 その結果、polyQ配列を有する9タンパク質が細胞質と核との間を行き交うこと、およびそれらのタンパク質間で8個の相互作用が見つかった。それらはNotchシグナル、ユビキチン化、ヒストンアセチル化といったシグナル経路に関与していることを発見した。 第2番目に、最近報告された、ハンチンチン・タンパク質のpolyQの反復長と神経突起の伸長が逆比例するという事例について、その分子機構検証系を樹立するために、ハンチンチンのPPIおよび神経突起伸長調整にいたるパスウェイの両知識空間を重ね合わせることにより、ハンチンチンにおいて神経突起伸長の調節に関与することが知られている経路を抽出した。 その結果、ハンチンチンと相互作用するタンパク質の中から6種類が低分子量Gタンパク質を介したRasスーパーファミリーに属するシグナル伝達経路を経て、細胞骨格やアクチン・タンパク質に作用し、神経突起伸長を制御する経路につながることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請書では本研究を解析Iと解析IIに分け、状況に応じて、進めていくことにしており、2018年度で形になったのは主に解析Iであった。 解析Ⅰ「各種反復の関わる相互作用における生命現象の情報探索」については、手順(Ⅰ):(1) 手動による分子間相互作用情報整備、(2) 自動実行アルゴリズム考案、に相当する部分を2018年度に行った。 正攻法的なアルゴリズムを既知の核・細胞質両局在性IDRハブタンパク質に対して実行したことで、polyQ含有タンパク質がIDRの性質を利用してシグナル伝達に広く機能している実態を明らかにすることに成功したといえる。 解析II「神経細胞中のpolyQ/CAG反復および反復配列結合因子の分布と量の解明」については、当初の計画とは若干異なる時間の使い方をした。本研究の申請書を出してから米国の研究チームにより報告された、ハンチントン病患者由来iPS細胞を用いたデータ[Mehta et al. 2018]が、本研究で提唱した仮説を支持する有力な傍証となりうる可能性を見出したため、彼らの研究結果をもたらした、分子機構について解明する方向へ変更することが本研究の近道になるか、検討するための調査に時間を費やした。現状としては、申請者自身の専門技術からより離れる手法になるため、その道の専門家が興味を示して共同研究を申し出てもらえるように、バイオインフォマティクス解析を行ってより焦点を絞る研究プロジェクトを、今後進めることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
解析Ⅰで行った「相互作用における生命現象の情報探索」については、実際には2つの異なる手法を行っている。それらの結果それぞれを整理し、各種反復の関わるについては、短い論文としてまとめて投稿したい。 また、新たに開始すべき、より進化学的解析のプロジェクトを構想中である。
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Causes of Carryover |
2018年度は本研究を取り巻く動向に変化が生じ、研究の方向性について調査を独力で行うことに費やし、当初計画していた実験開始を遅らせた。そのため、実験用の経費について手をつけずに繰り越すことにした。今後、申請書段階で無かった新たな解析に用いる予定である。
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