2019 Fiscal Year Research-status Report
Implication of diversified polyglutamine repeat polymorphisms in human evolution
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18K06452
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
嶋田 誠 藤田医科大学, 総合医科学研究所, 講師 (00528044)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ポリグルタミン / 多様性 / 反復多型 / short tandem repeat / 人類進化 / 神経変性疾患 / 天然変性Hubタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリグルタミン(polyQ)反復長に多型が存在する座位は神経発達調節に関わる遺伝子中に有意に多く存在するという我々の先行研究を受け、その生物学的意義は、反復多型によって神経系の発達における多様性が生み出されることにより、環境変動に強い集団となることにある、との仮説を立て、polyQ多型含有タンパク質の関わるシグナル経路を情報学的に抽出する戦略と、実験的に検証する戦略の、両面で本研究を開始した。 2018年度は主に前者の戦略を行うことで、polyQをもつタンパク質には核・細胞質両局在性ID-Hubタンパク質が有意に多く含まれていること、また、それらのうち9タンパク質が関与する8個の相互作用でいくつかのシグナル経路に関与していることを示した。 この結果を受け、反復多型によって神経細胞発達過程においてシグナル伝達あるいは輸送の効果に差異を生じさせることで、神経細胞に多様性を生じさせることを誘導実験的に確かめることの有効性を、研究動向と照らし合わせて問い直すことに2019年度は費やした。すると、最近いくつか本仮説を裏付けるような事実、つまりpolyQ反復長の多型によって、神経細胞の形態学的、電気生理学的、代謝や細胞接着における特性が段階的差異をもって現れるとする研究結果が、複数発表されてきたことがわかった。それらの研究結果には、生じる神経細胞の差異を個体の能力および集団中の個性さらには人類進化に結びつけた展開はなされていない。そこで本研究としては、さらなる発生学的な実証ではなくむしろ、人類進化の過程でこれらのpolyQ座位の多型の出現・維持が他のpolyQ座位と比べてどのような違いがあるのかを明らかにすることに意味を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
進化ゲノム学の理論的手法は近年目覚ましい発展を遂げ、申請時に思い描いていた状況とは違ってくる可能性を感じた。調べていくうちに、人類集団拡散過程の特定の時代に特定の遺伝子座における選択圧が緩んだ可能性を示す方法が考案されている現状を把握した。また反復配列の解読技術の進展はこれまで遅れていたが、最近一分子シークエンス技術を応用する方法が考案されたこともわかった。そこで、これら理論的および技術的な進展を本研究目的に適用する方法を模索し、今必要なのは、世界中の現代人集団における反復多型および周辺領域配列多型の型判定データであるとの方針を決定するに至った。 現在までのところ、反復多型の進化モデルを如何に作るか、十分に検討する必要があり、予想以上に時間がかかっている。また、十分な仮説検証の効果を得るために、必要な検査集団数、検査個体数をいかに算定して、実験計画を建てるべきか、目下検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
Coriell Institute, NHGRI Sample Repository等を利用し、アフリカ、ヨーロッパ、アジア、アメリカの各大陸から集団サンプルを取得し、polyQ多型および隣接領域のハプロタイプ多型における型判定を行い、各polyQとその周辺領域に対する選択圧を長期間にわたって理論的に定量することで、polyQ多型座位が脳神経系発達調節に関する遺伝子中に有意に多く見いだされること、また核・細胞質両局在性ID-Hubタンパク質に有意に多く見いだされることの、生物学的意義を明らかにしていく計画である。
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Causes of Carryover |
動向調査の結果を注意深く検討し、実験計画を変更することにした。その結果、次年度にヒト集団DNAサンプルとシークエンス費用が必要になった。
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