2018 Fiscal Year Research-status Report
衣類の着用による触覚情報を利用した日常生活動作向上に繋がる方策について
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18K06455
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Research Institution | Kyushu Kyoritsu University |
Principal Investigator |
大下 和茂 九州共立大学, スポーツ科学部, 准教授 (10615826)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 博也 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (90294256)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 姿勢動揺 / 歩幅 / 触覚 / ライトタッチ効果 / 二点弁別閾 |
Outline of Annual Research Achievements |
立位時に身体を支えられない程度の力で床面に固定された物へ触れると,触覚入力を通して自身の身体位置や向きの認識が高まり,姿勢動揺が低下する.この現象は「ライトタッチ効果」と呼ばれている.本研究の目的は,ライトタッチ効果を活用し,衣類を介した触覚入力により,日常生活動作向上に繋がる方策を検討することである.そして,当該年度は,ライトタッチ効果のメカニズムについて検討するとともに,衣類を介したライトタッチ効果獲得の可能性について言及することであった. 立位時のライトタッチ効果について,二点弁別閾により評価した指先の触覚感度と姿勢動揺低下度との関係について調べた結果,触覚感度と姿勢動揺低下度との関係は認められなかった.すなわち,ライトタッチ効果における触覚の役割は,触覚を通して自身の動きを把握しているのではなく,触覚を参照点として,それに対する身体各部位の相対的な位置変化を捉えている可能性を示した.そのため,ライトタッチ効果を得るために必要な触角は高度な感度が必要なのではなく,大凡何かに触れていることが把握できる程度で十分なことを示唆している. この結果をふまえ,腰周りに下腿部まで覆われる布を巻き,布に下肢が接触することに対する歩行能力への影響を調べた.その結果,通常歩行に対して,視覚入力を遮断した(目隠し)歩行では,歩幅が大幅に低下するが,布を巻くことによって,歩幅の低下を抑制することが出来た.すなわち,歩行時に下肢への布の接触があることは,脚を運ぶ方向など歩幅感覚の把握に繋がることを示唆している.この結果は,自身の動きが反映されるような布を身に纏うことにより,布との接触から自身の身体位置や向きの知覚が向上し,歩行時の姿勢制御向上に繋がることを示し,着用する衣類の形状によっては,動作の向上・改善に繋がる可能性を示している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で示したとおり,本年度の目的である,ライトタッチ効果のメカニズムの一部や布の接触によってもライトタッチ効果が得られるかなどの課題は遂行できている. 布の種類とライトタッチ効果については,年度内に報告できるまでには検討が進まなかったが,来年度からの検討事項である,衣類の接触が姿勢や歩行に及ぼす影響を検討する課題の遂行には支障がない結果を得られており,ほぼ計画通りに概ね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の結果を踏まえ,今年度は実際の衣類を介してライトタッチ効果を得ることで,立位姿勢動揺だけでなく,日常生活動作に及ぼす影響についても検討を加える. 現在,検討を進めているライトタッチ効果を最も得やすい布(衣類)を特定し,それを用いて,基本的な姿勢保持,姿勢変換,移動動作など様々な動作でのライトタッチ効果を検討する.これにより,衣類を介したライトタッチ効果が,どの程度,日常生活で有効かを明らかにする. さらに,次年度の課題である,衣類を介してライトタッチ効果が日常生活動作の学習に及ぼす影響についても予備実験を行う.これにより,次年度(最終年度)の課題がスムーズに実施でき,当該年度内に研究成果を報告できるよう準備を進める.
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