2018 Fiscal Year Research-status Report
ダウン症モデルマウス脳において神経細胞の産生異常が引き起こされるメカニズム
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18K06458
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
倉林 伸博 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (40581658)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ダウン症 / 大脳新皮質 / 神経前駆細胞 / 神経発生 / インターニューロン / 錐体細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダウン症はヒト21番染色体のトリソミーが原因で引き起こされる疾患であり、その脳では神経細胞数の顕著な低下が認められる。近年、ダウン症のモデルマウスを用いた研究により、ダウン症脳の大脳新皮質において神経細胞数が減少する仕組みが調べられているものの、その分子・細胞レベルでの理解は充分に進んでいない。本研究では、大脳新皮質を構成する興奮性の錐体細胞および抑制性のインターニューロンを生み出す異なる神経前駆細胞に焦点を当て、ダウン症モデルマウスにおける神経分化の異常のメカニズムを明らかにする。錐体細胞に分化することが運命づけられた神経前駆細胞は中間前駆細胞という細胞に変化する。中間前駆細胞は神経細胞数の決定に重要な役割を果たしているため、この細胞の挙動を調べることは、ダウン症脳における発生異常のメカニズムを理解する上で極めて重要である。本年度は、中間前駆細胞を特異的に標識できるレポータープラスミドを構築し、これを用いて中間前駆細胞の分化をin vitroおよびin vivoで解析した。その結果、中間前駆細胞の分化様式がダウン症モデルマウスにおいて変化している可能性を示唆するデータを得た。一方で、大脳新皮質を構成するインターニューロンの大半は、内側基底核原基 (MGE)と呼ばれる領域における神経前駆細胞から産生される。本年度は、ダウン症モデルマウスにおけるMGE前駆細胞の分化に異常がある可能性を見出した。また、レポーターマウスを用いることによって、ダウン症モデルマウスにおけるインターニューロンを特異的に標識できる実験系を構築した。今後はこの実験系を用い、標識された神経細胞の細胞運命、および産生されたインターニューロンの形態や大脳新皮質内での配置などをダウン症モデルマウスにおいて精査する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はまず、着目している前駆細胞を特異的に標識する実験系を構築することができたため、概ね当初の計画通りに研究が進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画は予定通り進行中であるので、当初の計画に基づき、今後は前駆細胞の挙動異常を引き起こす分子基盤に迫っていく。
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Causes of Carryover |
研究が当初の想定よりも効率的に進み、実験動物を購入・飼育する費用が少なくなったため。これらの費用は、次年度の動物の購入・飼育費に充てる予定である。
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