2019 Fiscal Year Research-status Report
ペリニューロナルネット調節を介したGABA神経への脳内栄養因子の作用機序の解明
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18K06460
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
岩倉 百合子 新潟大学, 脳研究所, 助教 (40452081)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | コンドロイチン硫酸プロテオグリカン / ペリニューロナルネット / 上皮成長因子 / 大脳皮質聴覚野 / 統合失調症 |
Outline of Annual Research Achievements |
H31年度は、遺伝子改変マウスを用い、以下のデータを得た。 上皮成長因子(EGF)モデルマウス大脳皮質聴覚野におけるコンドロイチンプロテオグリカン量の変化: EGFはGABA神経細胞の形態的、機能的発達の抑制と、それらに伴う発達終了後(成体時期)の行動変化を引き起こす。所属研究室のこれまでの研究では、上皮成長因子(EGF)投与動物及びEGF過剰発現動物では、統合失調症と関連する認知・行動異常があることが明らかになっている。特に、統合失調症の様々な症状の中でも代表的な症状の一つが幻聴である。このEGFを用いた統合失調症モデル動物においても、統合失調症患者と同様の聴覚反応の異常が認められることが報告されている。初年度の研究結果より、上皮成長因子(EGF)過剰発現マウス(成体)の大脳皮質において、GABA神経細胞周囲に形成されるレクチン(WFA)結合性のペリニューロナルネット(PNN)陽性細胞数の低下が観察された。そこで、このEGFモデルマウスを用いて、一次聴覚野におけるPNN形成調節が、実際に幻聴のような精神症状と関連する可能性を検討した。EGF過剰発現マウスの大脳皮質聴覚野組織サンプルにおける、PNNの主要な構成成分であるコンドロイチンプロテオグリカン(CSPG)の発現量を解析すると、野生型マウスと比較して、C4S, C6Sともに有意な減少が見られた。同じく統合失調症モデルであるEGF投与ラットにおいては、一次聴覚野における最初期遺伝子(IEG)の発現量も変化していたことから、EGFモデル動物においては、CSPGの産生量の減少、ひいてはPNN形成の変化がこの領域での神経活動に顕著な影響を与えていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H31年度は、in vitroで見られたEGFによるPNNsやその構成要素であるCSPGなどの産生/分解への影響が、成体(個体)におけるEGF/EGF受容体(ErbB1)シグナルの変調がもたらす高次機能への影響にどのように反映されているのかを検討することができた。特にこの動物は疾患モデルでもあることから、分子・細胞レベルからスタートした実験結果を個体レベル、特に病態と関連する研究へ還元する足掛かりとすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
過去の所属研究室の研究から、EGFはGABA神経細胞の形態的、機能的発達の抑制と、それらに伴う発達終了後(成体時期)の行動変化を引き起こすことがわかっている。H31年度の研究結果においてin vitroで見られたEGFによるPNNsやその構成要素であるCSPGなどの産生/分解への影響は、成体(個体)におけるEGF/EGF受容体(ErbB1)シグナルの変調がもたらす高次機能とも関連することが分かった。さらに、この動物が統合失調症のモデルマウスであることから、細胞外環境であるPNNと、GABA神経細胞の機能とが実際に疾患の発症や病態と関連することを示唆する可能性もある。そこで、これらの動物組織を再度用いてコンドロイチンプロテオグリカンのコア蛋白などの検出を行い、前年度までのデータと比較検討する。さらにそれらをまとめ、論文として発表する。
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Research Products
(1 results)