2019 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of the regulatory mechanism of motor learning using real-time FRET and fast-scan voltammetry
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18K06461
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
田端 俊英 富山大学, 学術研究部工学系, 教授 (80303270)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上窪 裕二 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80509670)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中枢神経系 / ニューロン / シナプス / 可塑性 / 受容体 / 学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
小脳プルキンエ細胞に発現する代謝型グルタミン酸受容体mGluR1は、運動学習を支える小脳長期抑圧(シナプス可塑性の一種)をトリガーする分子である。mGluR1には別種の代謝型(Gタンパク質共役型)受容体であるアデノシン1型受容体A1RやB型GABA受容体GABAbRが複合体化しており、当該脳部位の局所に蓄積したアデノシンやGABAが複合体に作用すると、小脳長期抑圧や運動学習が阻害/促進されると考えられる。 アデノシンの局所の動態を調べる目的で、微小カーボン電極とfast-scan cyclic voltammetryを組み合わせた方法を改良・開発した。従来の微小カーボン電極はガラス毛細管の先端に単一カーボン繊維を取り付けたもので、実際に神経変調物質を感知するカーボンの表面積を一定にすることが極めて困難であった。我々はこのカーボン繊維の周囲部を光凝固剤で保護・密閉し、最小面積のカーボン線維の垂直断面のみを試料に露出させる技術の開発に成功した。この方法で製作した電極では直径わずか約7ミクロンのカーボンの探査部位が電極外壁に対して10ミクロン以内の場所にでき、ニューロン等の微小標本のごく近傍の測定が行える。また我々は電気生理学用パッチクランプ増幅装置の基準電極と試験溶液の間に任意の電圧を印加するブースターを付加し、増幅装置が出力可能な刺激電圧の範囲を拡張させることに成功した。電気生理学増幅装置のヘッドステージにカーボン電極を取り付けることによって、パッチクランプ実験と同様の方法でニューロン近傍に電極をアプローチできるようになった。これらの装置を用いて、fast-scan cyclic voltammetryを実施したところ、0.1秒の間隔で試験溶液中のアデノシンが電極上で酸化した際に出す電流を測定することができた。検出感度も1microMレベルであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第2年度は小脳のスライス標本等で局所のアデノシンの動態を測定する方法を確立することを目的として研究を行った。先行研究で用いられてきたカーボン電極は先端の形状のコントロールが難しく、狙っているμmレベルの領域に焦点を当てて観測することが難しかった。我々はガラス毛細管に入れたカーボンの単一繊維を光凝固剤で保護し、垂直に切断した繊維の断端だけを測定部位に露出させることができる電極の開発に成功した。また電気生理学用パッチクランプアンプに電圧ブースターを付加する改良によって、広い範囲で刺激電圧を発生できるようにし、高い電圧を印加しなければ検出できないアデノシンを1 microMレベルで検出できるようにした。以上のように、本研究の難関であるアデノシン微小測定の方法論が完成できたことから、所期目標である当該脳部位におけるアデノシン動態の分析を進めることが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度の研究によって、アデノシンの動態を測定する方法が完成した。また研究分担者らとの研究によって、single-molecule FRETをより高い確率で観察可能にする、mGluRとGABAbRを強制的にリンクさせたものを発現する発現系細胞を開発した。 本年度は、これらの技術・方法を用い、小脳のプルキンエ細胞の近傍でアデノシンがどのように蓄積しているか、また神経活動依存的にどのように濃度が変化するかを分析する。また作出された発現系細胞を用い、リガンドを受容したGABAbRがmGluR1のグルタミン酸感受性をどのように変調しているか、具体的な分子様態を分析する。
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Research Products
(10 results)