2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K06471
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
浜 千尋 京都産業大学, 生命科学部, 教授 (50238052)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | シナプス間隙 / シナプス / アセチルコリン受容体 / Hig / Hasp / Sclamp / ショウジョウバエ / ナノコンパートメント |
Outline of Annual Research Achievements |
シナプスはニューロン間の情報伝達を行う場であり、神経機能の中心的な役割を担っている。そのために、歴史的にも非常に多くの研究が進められてきた。しかし、その対象はシナプス前部および後部を主としており、その両者間の隙間であるシナプス間隙の研究は少なく、特に中枢のコリン作動性シナプスのシナプス間隙の解析は進んでいなかった。 我々の研究グループは、ショウジョウバエの遺伝子変異のスクリーニングから、脳内のシナプス間隙に局在するHigタンパク質を同定し、それがコリン作動性シナプスに特異的に存在することを明らかにした。また、HigがnAChRの局在を制御していることを示した。HigはCCPドメインを持つ分泌性のタンパク質で、そのシナプス間隙への局在機構の解明が次の問題であった。シナプス間隙には第二のCCPドメインタンパク質であるHaspが存在しており、このHaspがHigの局在に必須であることが判明した。さらに、HigとHaspはシナプス間隙の中で別々の分子コンパートメント(ナノコンパートメント)を形成していることを発見した。このシナプス間隙内におけるナノコンパートメントの成立機構と意義は不明な点が多いが、成立機構に関する知見として、我々が同定した膜タンパク質であるSclampがHaspの間隙への局在に必要であることを見出した。 また、hig変異の表現型を抑圧するサプレッサー変異を分離して解析したところ、その変異はnAChRサブユニットのDalpha5をコードする遺伝子内に生じていた。これらの解析から、HigはDalpha5と結合することにより、Dalpha5のエンドサイトシスを介したnAChR局在抑制機構をさらに抑えるという、nAChRのシナプス局在制御モデルを提出した。この研究はthe Journal of Neuroscience誌に受理された(印刷中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ナノコンパートメントの形成機構に関わるSclampタンパク質を発見できたことは進歩であったが、その詳細な制御機構については未だ解明すべきことが多く残されている。また、ナノコンパートメントの存在意義について十分な見解を持つに至っていない。一方、nAChRのシナプス局在制御については、世界的に研究が進んでいなかったが、我々の研究成果が一つのブレークスルーとなる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
ナノコンパートメント形成機構の解明と意義について、さらに分子レベルの解析および超解像顕微鏡を用いた分子解剖学的研究を進めていくべきである。その上で、シナプス間隙を含めた新しいシナプス像を提出する必要がある。また、nAChRのシナプス局在の制御機構について、我々はDalpha5サブユニットがその鍵であることを見出したことから、Dalpha5と結合する分子を免疫沈降法などにより同定することにより、新たな展開が得られることが期待される。このnAChRの局在制御機構の解明については、神経科学の基礎的問題の理解が得られるだけでなく、神経変性疾患の発症機構の理解にも繋がる可能性がある。
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Causes of Carryover |
投稿した論文のレビューに対する追加実験を遂行するために予想外に時間がかかることになった。次年度では、論文の受理に目処がついたため、研究費の一部を論文掲載料に使う予定である。
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