2019 Fiscal Year Research-status Report
自閉症早期にみられる領域特異的な大脳新皮質肥大のメカニズムの解明
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18K06477
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川口 大地 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (70549518)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脳・神経 / 発生・分化 / 自閉症 / 大脳 |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉症の発症メカニズムはほとんど解明されていない。これまでの研究により、多くの自閉症児において局所的な脳の肥大が観察されている。肥大のパターンから自閉症発症を予測できるという報告もなされている。しかし、脳の局所肥大が自閉症発症の原因となっているのか、また肥大の原因メカニズムは何か、については必ずしも明らかではない。そこで本研究では、局所肥大を起こす分子メカニズムを明らかにすることを目指している。これにより、多くの自閉症患者に共通する疾患発症メカニズムの解明に繋がることが期待される。 昨年度の研究において、脳が肥大する遺伝子変異マウスの肥大領域をニューロンサブタイプマーカー等を用いて詳細に解析したところ、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンの構成比に異常が見られる可能性が示唆された。そこで本年度において、肥大脳領域における神経活動の測定を行った。その結果、神経活動のバランス(E/Iバランス)に異常が観察された。このような神経活動のバランス(E/Iバランス)の異常は自閉症患者において観察されており、肥大が原因となって活動異常が起こっている可能性が示唆された。 生後の脳肥大は胎生早期の異常に起因するという可能性が考えられた。そこで昨年度に引き続き、肥大モデルマウスにおいて胎生早期にどのような遺伝子発現の異常が起きているのかを網羅的に調べた。その結果、発生時期や脳領域特異的に発現する遺伝子において特徴的な発現変動が見られた。今後は、これらの遺伝子が、肥大に関与しうるのかを調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度において見出した、肥大領域において興奮性ニューロンと抑制性ニューロンの構成比に異常がみられるという予備的な結果を発展させて、実際の神経活動に異常が生じていることを明らかにすることができた。また、肥大に関与しうる遺伝子の絞り込みを行い、発現時期や発現領域に特徴のある遺伝子を複数得ることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
脳肥大モデルマウスにおいて、神経活動異常を詳細に解析するため、様々な脳領域における神経活動の変化を測定する予定である。これにより、どのような神経ネットワークの異常が引き起こされているのかを明らかにできる可能性がある。 胎生早期に発現変動する遺伝子が脳肥大や自閉症行動の発現に寄与しているのかを検討するため、ゲノム編集技術を利用した迅速な遺伝子欠損マウス作成法を用いて変動遺伝子のノックアウトマウスを作成する。これらノックアウトマウスにおいて、脳肥大の解析や自閉症関連行動解析を行う。
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Causes of Carryover |
脳肥大モデルマウスにおける神経活動計測実験の結果、当初の予想に反し、神経活動のバランスに自閉症様の異常が生じる可能性が浮上した。そこで、神経活動の異常を詳細に解析するため、神経活動を広範囲に測定するという追加実験を行う必要が生じた。 2020年度は、神経活動を脳の様々な領域で測定する実験を進め、脳肥大が神経ネットワークに与える影響をを明らかにしたい。
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