2019 Fiscal Year Research-status Report
精神神経疾患における新規mTOR相互作用因子の機能解析
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18K06478
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
葛西 秀俊 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (40403232)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | mTOR / Flightless-I / 遺伝子操作マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
mTORは細胞の栄養センサーとして機能する分子で、脳における異常な活性化は自閉症や神経変性疾患を引き起こす。本研究では昨年度までに、大脳皮質におけるmTOR相互作用因子の網羅的同定および機能解析を行った。プロテオミクス解析の結果、mTOR新規相互作用分子としてFlightless-I (Flii)を同定し、Fliiコンディショナルノックアウトマウスを作製した。Emx1-creを用いて前脳においてFliiを欠損させたマウス(Emx1-Fliiマウス)では、大脳皮質の顕著な萎縮を引き起こした。このことからFliiは大脳皮質の形態形成に重要な役割を担っていると考えられた。 本年度は、上記の大脳皮質の萎縮の時期および原因を明らかにするために、胎生期におけるEmx1-Fliiの大脳皮質を詳細に解析した。その結果、胎生12-14日玲のEmx1-Fliiマウスにおいて、cleaved-caspase 3陽性細胞が顕著に増加していることが明らかとなった。このことから、Emx1-Fliiマウスの大脳皮質の発生過程において過剰なアポトーシスが起こり、その結果、大脳皮質が萎縮したと考えられた。 小脳おけるFliiの役割を明らかにするために、GluRdelta2-creを用いてプルキンエ細胞特異的にFliiを欠損したマウスを作製した。このマウスにおいてはプルキンエ細胞のアポトーシスは観察されなかった。またロータロッド試験によって運動機能を調べたが、コントロールと比較して大きな違いは認められなかった。このことから、Fliiは小脳の運動機能およびプルキンエ細胞の生存には大きく寄与しないことが考えられた。これは、GluRdelta2-creは生後2週齢前後でCreが発現し、小脳の発生時期にFliiが欠損しないことが原因ではないかと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度明らかにしたEmx1-Fliiマウスの大脳皮質の萎縮について、胎生期における詳細な解析によって、アポトーシスによるものであると明らかにできた。さらに、大脳皮質領域以外にも、小脳プルキンエ細胞における解析も遂行することができた。このことからおおむね順調に、神経におけるFliiの解析が進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
Emx1-Fliiで観察された大脳皮質の萎縮および神経細胞のアポトーシスが、mTOR経路とどのようにクロストークするのかを今後は重点をおいて解析を進めていきたい。具体的には、Emx1-FliiマウスにおけるmTORシグナル分子の発現やリン酸化などの変化を明らかにしていく。また、アポトーシスの原因についても不明であるため、ストレスシグナルの動態などを中心に解析を進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度は学会などによる成果発表を行わず、旅費として補助金を使用しなかったため、次年度に繰り越して使用したいと考えています。
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Remarks |
http://lar.cdbim.m.u-tokyo.ac.jp/index.html
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