2019 Fiscal Year Annual Research Report
グリシン作動性シナプス増強を誘導する分子機構の解明
Project/Area Number |
18K06489
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
荻野 一豊 青山学院大学, 理工学部, 助教 (20551964)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ゼブラフィッシュ / グリシン受容体 / ゲフィリン / マウスナー細胞 / CaMKII / シナプス可塑性 / 音驚愕反射 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゼブラフィッシュ稚魚を用いた実験により、繰返し音刺激による音驚愕反射の減少は刺激終了10分後には回復することが最近報告された。この報告は、リン酸化ゲフィリンを脱リン酸化することで、音驚愕反射が抑制された状態から通常の状態へ復帰させるホスファターゼの存在を示唆している。研究代表者によって示された音驚愕反射抑制と関連するゲフィリンのリン酸化はセリン残基において起こるため、セリン/スレオニン脱リン酸化酵素の阻害剤をゼブラフィッシュに投与して実験を行い、この可能性を検証した。オカダ酸によってPP1とPP2Aを阻害した時と、TautomycetinによってPP1を阻害した時に、繰り返し音刺激を与えなくてもマウスナー細胞上のシナプスでのグリシン受容体密度が高まり、音驚愕反射が起きにくなった。この現象はPP2Bをcyclosporin Aによって阻害した時には起きなかった。しかし、当初予想していた音驚愕反射抑制状態からの回復が遅くなることはPP1、PP2A、PP2Bを阻害しても観察されなかった。PP1を特異的に阻害することで、繰り返し音刺激を与えなくてもグリシン受容体のシナプスへの集積が促進されたことと音驚愕反射が抑制されたことは、PP1活性が繰り返し音刺激を受けていない状態でのグリシン作動性伝達の強度を規定している可能性を示唆している。PP1活性による調節がゲフィリンとグリシン受容体の結合強度の調節を介して行われているのかを検証するために、tautomycetinによるPP1阻害がゲフィリンとグリシン受容体の結合強度を強めるかを免疫共沈降法によって調べることを計画した。この実験の準備としてHEK293細胞を用いた実験系の立ち上げを行った。
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