2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K06499
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
岩崎 広英 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30342752)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | シナプス / スパイン / 二光子顕微鏡 / 電子顕微鏡 / 光―電子相関法 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経回路が長期に亘り記憶を保持するためには、シナプスが長期に亘り安定的に維持される必要がある。一方、新しいことを学習したり外界の変化に応じて柔軟に対応する上でシナプスの可塑性は重要である。本研究課題は、シナプスの安定化をもたらす分子的基盤の解明を目的とし、大脳皮質スパインの安定性と形態との関連について解析する。 具体的には二光子励起レーザー顕微鏡を用い、マウス大脳皮質体性感覚野の神経細胞の同一の樹状突起を長期間にわたって観察した後、同じ部位を電子顕微鏡で同定し、電子顕微鏡による立体構築像を得る。これにより長期間にわたって安定なスパインと新たに生成されたスパインに特徴的な形態学的パラメーターについて解析する。 これまでにin vivoイメージングを行った箇所を効率的に電子顕微鏡で同定し、三次元再構築する手法を確立した。具体的には頭蓋骨を薄く削ったマウスを用い、いわゆるthinned skull法によりスパインを長期観察した後、マウスを還流固定し、脳をスライス化した後で、二光子顕微鏡のレーザーによる焼灼痕を用いて標的となる樹状突起をマークし、この焼灼痕を指標としてFIB-SEMと呼ばれる走査型電子顕微鏡を用いることで樹状突起の三次元再構築を行った。これによりスパインの時系列的な変化の追跡と、スパインの微細構造とを対応づけることが可能となった。この手法を推し進めることにより、安定スパインと新生スパインの三次元再構築像を蓄積することが可能となり、スパインの安定性と微細構造の関連について定量的な解析を行うための基盤が確立された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでは頭蓋骨を薄く削ったマウス脳を二光子顕微鏡により経時的に観察し、目的となる樹状突起を電子顕微鏡で効率的に同定する手法について確立し、安定スパインと新生スパインの立体構築像を取得することが可能となった。ただしこの手法では、長期間に亘るin vivoイメージングが必要であることや、FIB-SEM顕微鏡による三次元再構築可能な体積に限りがあることから、定量的な解析のために充分な量のデータを蓄積するためには長い時間を要する。そこで、複数回にわたる継続的なin vivoイメージングが可能となるopen skull法による二光子顕微鏡観察について確立するとともに、電子顕微鏡観察のための効率的な試料加工法についても改良を重ねた。依然としてデータ取得までに要する時間は比較的長期間であるが、効率的にデータを取得することが可能となり、定量的解析を可能とする手法を確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに大脳皮質神経細胞の樹状突起を経時的に観察し、樹状突起スパインの微細構造を効率的に三次元再構築する手法を確立することができた。しかし研究代表者は2018年12月に群馬大学医学部に異動した。これにより、二光子顕微鏡およびFIB-SEMの利用が困難となった。また群馬大学の動物実験施設の方針により、マウス大脳皮質の長期間に亘るスパインの動態観察が困難となった。そこで今後はシナプス安定性の分子機構の解明という本来の目的に立ち返りつつ、新たな系の導入を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
研究代表者は2018年12月に群馬大学に異動した。これに伴い、その前後での実験計画や研究費の使用計画等に一部変更が生じたことから次年度使用額が生じた。研究計画の具体的な実施状況には当初の予定に対して若干の変更は生じるが、当初明らかにしようとしていた研究計画そのものには支障は生じない。
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