2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K06521
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
辻 知陽 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任准教授 (00523490)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 隆宏 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 助教 (40787389)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | トランスシナプス標識法 / バソプレシン / 嗅覚 / 社会性 / 情報 / 変異型狂犬病ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
オキシトシン(OT)及びバソプレシン(VP)は、社会性の絆形成、認識、記憶など様々な局面で作用する脳内ペプチドホルモンである。視床下部にある視索上核(SON)や室傍核(PVN)に存在するOT神経やVP神経から産生されており、OTやVPの脳内作用部位や、作用機序、生理機能については多くの研究が齧歯類でなされている。しかし、社会性情報が感覚器からどのように入力処理されるのか、また、VPやOTがその入力情報経路や、フィードバックの情報処理経路にどのように関与するかについては、未だ不明な点が多い。申請者は、齧歯類の社会性情報を含む外界情報の入力は、嗅覚系が優位なことに着目し、嗅覚系から入力される社会性情報処理機構を明らかにしたいと考えた。そこで、本研究では、嗅覚系のVP神経の神経回路を明らかにし、匂いによる社会性情報処理機構を検討する。方法として、変異型狂犬病ウイルスを用いたトランスシナプス標識法を用いて、嗅覚VP神経の入力及び投射経路の同定を行う。変異型狂犬病ウイルスは、感染した細胞から、一段階だけ上流に位置するシナプス前細胞(入力する細胞)に感染するので、この方法を用いると、スタート細胞から逆行性に位置する細胞を同定できる。申請者はこのトランスシナプス標識法を用いて、嗅覚VP神経に入力する神経を同定する。さらに、このトランスシナプス標識法は、バソプレシン神経の投射先も同時に同定できることから、非常に利便性の高いシステムである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由 ラットの嗅覚系バソプレシン細胞の局在及び生理的役割に関しては報告がある(Nature,2010)。一方で、申請者は、先行研究にて報告された部位以外に、梨状 皮質にもVP神経群が存在し、僧帽細胞から直接入力があることを報告した(Tsuji, Journal of Neuroendocrinology, 2017)。しかし、マウスの嗅覚系に存在するバソプレシン細胞については先行研究が存在しない。我々は、マウスの嗅覚系バソプレシン細胞の局在を確認し、ラットとのバソプレシン細胞の局在を比較した。この結果をもとに、ウイルス導入部位を特定した。昨年度、Addgene社から購入したウイルスを用いて実験を行うが、ウイルスの発現が安定せず条件検討を行っていた。今年度、ウイルス導入条件や実験系が確立し、一部の嗅覚系バソプレシンと視床下部の新規神経経路を同定した。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は、マウスの嗅覚系バソプレシン細胞の局在を確認し、ラットとのバソプレシン細胞の局在を比較した。この結果をもとに、ウイルス導入部位を特定した。Addgene社から購入したウイルスを用いて実験を行っているが、ウイルスの発現が安定せず条件検討をおこなっていたが、今年度、使用できるウイルスを同定、実験条件が確定した。今年度、一部の嗅覚系バソプレシンと視床下部の新規神経経路を同定したため、引き続き、その他の嗅覚系の神経経路を同定していく予定である。
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Causes of Carryover |
本課題で支出予定だった設備備品(固定装置用電動マイクロマニピュレーター、固定装置用電動マイクロインジェクター、小型脳定位固定装置)について、学内施設にて共通機器として借りることができたため、余剰分は次年度に繰越し研究の充実にあてる。
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