2018 Fiscal Year Research-status Report
海馬が合成する脳ステロイドによる記憶神経シナプスの早いモジュレーション機構
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18K06526
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
川戸 佳 帝京大学, 薬学部, 特任教授 (50169736)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 神経内分泌学 / 神経ステロイド / 海馬 / シナプス / 記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
海馬スライスの神経シナプスを超解像共焦点顕微鏡で3次元像を解析することで、性ホルモンによる神経スパインの急性的non-genomicな増減の解析を行った。海馬スライスのCA1領域(空間記憶にかかわる)のグルタミン酸神経において、男性ホルモンであるテストステロン(T)ジヒドロテストステロン(DHT) と強い女性ホルモンE2の2時間短期作用を詳しく調べた。(1)過去に発見した「 T, DHTやE2が、神経スパイン内にある男性ホルモン受容体ARや女性ホルモン受容体ERに結合 → (シナプス可塑性を制御する)蛋白キナーゼであるLIMK, MAPK, PKA, PKC のリン酸化→アクチン制御蛋白(cofilinや cortactin)のリン酸化→ アクチン重合→ スパインが増加する」機構において、PI3K の関与を調べた。その結果は、E2作用では、PI3Kが関与して全スパイン密度を増加させ、特に頭部の小さいスパインを増加させた。それと異なり、T, DHT 作用では、全スパイン密度は増やさないが、頭部直径の分布を変化させるという、E2との明らかな差があることを見出した。(2)E2作用は2時間も待たずに40分で起こることを見出した。これは、E2のスライスへの浸透時間20分を考慮すると、早い作用として限度であると思われる。 (3)性ホルモンとは生理的な作用が全く異なるストレスホルモンであるコルチコステロン(CORT)も調べていて、やはり早い神経スパイン増加作用があることは以前に発見していた。今回は更に詳しく調べたところ、CORTもLIMK, MAPK, PKA, PKCなどを稼働させて、スパイン増加を引き起こすということを発見した。つまり性ホルモンとストレスホルモンに共通するnon-genomic なシナプス制御作用が存在し、両者のシナプス制御にはかなり一般的な仕組みがあることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に進展している。 (理由)初年度で目標とした、男性ホルモンや女性ホルモン、更にストレスホルモンが、短時間で海馬の神経シナプスを増加させるメカニズムの相違点と類似点をかなり解明したことに加えて、これらを論文にまとめて一流誌に投稿して、有力な雑誌に論文が掲載出来たからである。2018年には有名な北米神科学会議に、米国の複数の教授と一緒に集団ポスターセッションを開催して、この分野の先端の問題を研究指導者が直接に議論できたことも大きな収穫である。特に米国NIHの方針で、グラントを獲得した場合、雄と雌の動物の比較をして発表することが必須になったという情報を得た。脳の高次機能でも gender difference を本格的に調べる機運になってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に交付請求書に書いた研究計画どおりに進めてゆく方針である。 単離した海馬スライス実験に加えて、個体のラットの海馬に性ホルモンの制御薬を注入することで、より in vivo な実験も行いつつある。
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