2019 Fiscal Year Research-status Report
Dramatic synergistic effect by the combination of a "rigid" chiral bicyclic skeleton with steric bulkiness and a "flexible" achiral linker for the development of highly effective asymmetric synthesis
Project/Area Number |
18K06550
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Research Institution | Tokyo University of Science, Yamaguchi |
Principal Investigator |
松永 浩文 山陽小野田市立山口東京理科大学, 薬学部, 教授 (10274713)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 不斉触媒 / 配座固定 / 側鎖 / 不斉有機触媒 / リンカー / 不斉Michael反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、汎用性と実用性の高い省資源・省エネルギー型不斉触媒の創製を目的として、配座固定「堅い」母核と「柔らかい」側鎖との組み合わせを利用し、低触媒量で高効率・高立体選択的な不斉合成を可能にし得る、汎用性と実用性に優れた新規不斉触媒の開発を行なっている。 令和元年度は、前年度の平成30年度に引き続き、配座固定「堅い」cis-1,2-ジアミン母核に「柔らかい」リンカーを導入した二官能性化合物を有機分子触媒として利用した、ニトロオレフィンの不斉Michael反応における、求核試薬の適用性の拡大を目的とした検討を行った。 1) 今後の応用展開を考慮し、これまで検討していたニトロオレフィンとは異なる、環状ニトロオレフィンを基質として反応を検討したところ、従来では反応性がほとんど見られなかったマロン酸エステルに対して、文献既知の同種有機触媒と比較しても極めて高い反応性と十分なエナンチオ選択性が認められた。 2) 柔軟なリンカー部に若干の動的制限を加えることを意図してエノン構造を導入した二官能性有機分子触媒化合物を従来の反応系に適用したところ、萌芽的知見ではあるが常温下での反応ながら従来型触媒と同等の極めて高い反応活性を維持しつつ95%eeのエナンチオ選択性が認められた。 これら知見は、本触媒系の今後の反応適用範囲の拡大に向けて極めて有望な情報であり、より精力的に触媒構造の最適化並びに様々な反応系及び反応基質への適用を図る予定である。 また、cis-1,2-ジアミン由来有機分子触媒の本反応における反応機構について計算化学的な解明を予備的に実施したところ、これまでの推測とは異なり、cis-1,2-ジアミン部位由来の二つ水素が1,2-ジケトンのカルボニルに配位している可能性が示された。今後、詳細な解析を実施し、本触媒系による反応機構の解明と計算化学を利用した触媒構造の最適化を進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者は平成30年4月より新規開設された山口東京理科大学薬学部に異動し、無の状態から研究室内の備品・消耗品調達やセットアップ、同じ研究室配属の講師及び助教との研究方針策定と技術指導等を行ない、昨年度までに大まかな準備は整った。しかし、ハード及びソフト面での不備はまだ残っていること、開設2年目で授業のコマ数や学部実習への対応などで申請者及びそのグループの教育エフォートが1年目以上に極めて高くなったこと、更には研究補助要員である学部学生や研究協力者である大学院生が皆無の状態であることから、残念ながら初期段階の精査を終わらせるまでには至っていない。しかし、前述のように、昨年度までに本触媒系の有効性や新たな展開が期待できるような知見が得られていることから、今後の更なるスピードアップに伴い触媒構造の最適化並びに様々な反応系及び反応基質への適用が実証できるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の令和2年度では、配座固定「堅い」cis-1,2-ジアミン母核に「柔らかい」リンカーを導入した二官能性化合物を有機分子触媒として利用した不斉Michael反応における反応基質の適用性の拡大について、昨年度までに得られた知見を基に、その適用範囲と特徴についてより的確に把握すると共に、その応用展開を検討する。即ち、1) 構造上の特徴を有す様々なニトロオレフィンをはじめとする各種Michaelアクセプター及びドナーについて検討し、その反応性や選択性の特徴について精査する。2) 他官能基の導入やリンカー部の自由度もしくは電子状態の制御による反応性・選択性への影響を検討し、より触媒活性の高い有機分子触媒の創生を目指す。3) 前述の方法論を他の代表的炭素-炭素結合生成反応に適用、反応活性やエナンチオ選択性など本触媒系の汎用性を確認する。4) 本触媒反応系について得られた知見を基に、医薬品候補化合物等合成への適用・展開について検討する。5)本反応系の反応中間体若しくは遷移状態における有機分子触媒の反応性及び立体選択性に及ぼす効果について計算化学的手法により推測・解明を行う。更には、6)今回の有機触媒開発コンセプトを不斉金属配位子開発に適用、即ち、堅いcis-ジアミン母格と柔らかい側鎖から成る新規不斉金属触媒の創製についても検討する。
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Causes of Carryover |
所属学部が新設学部であることから、令和元年度は昨年度の教育業務に加え新学年の教育業務(授業、実習等)の準備・運営に相応のエフォートを割く必要があったため、研究推進に必要な試薬等の消耗品類の購入額が当初予定よりも少なくなった。更に、年度末のCOVID-19感染対策に伴い、出張・参加を予定していた薬学会年会等の学会が相次いで中止になり、必要経費として計上していた出張・参加費がそのまま余ることとなった。
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